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コラム

百年構想のある風景

2015/1/12 10:00

街中スタジアム

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かつて“デパート”という新鮮な名で親しまれ、街のにぎわいの核(コア)だった百貨店が、全国の中心市街地から相次ぎ姿を消している。週末になると、観覧車のある“屋上遊園地”や“大食堂”目当てに、電車やバスに乗って家族みんなで出かけるのが、子供心にとても楽しみだった。品物を売り買いする場ではなく、人々に幸せや喜びを与えてくれる多機能複合型の魅惑的空間には、強い“求心力”が感じられた。ともに都市開発“三種の神器”と言われたホテルやオフィスビルにも、もはや単体では牽引力を持ち得ない。

欧州では、サッカーのホームスタジアムが、いま街中の新しい求心力の役割を担う。 スタジアムでホームゲームが開催される日数は、ビッグクラブでも、年間僅か26~7日にすぎない。多額の投資額に対して、1年365日眠ることなく、地域社会の人々といつも接点を持つようなスタジアムが求められるようになった。スポーツ以外の分野で稼働率を高め、施設全体の収益を上げる。もっとも、日本のドーム球場のような「多目的」とは異なり、あくまでホームとして地域の誇りを示す「顔」であり続けねばならない。 先駆けは、1996年完成のアヤックスのホーム:アムステルダム・アレナ(オランダ)。PPP(公民連携)方式を用いて民間資本を活用し、貸しホール、コンサートホール、ミュージカル・シアター、ショッピングセンター、ホテルなどを周囲に整備した。ファンショップ、レストラン、フィットネスクラブ、オフィス、老人ホーム、市民センター、中には見本市会場やカジノまで併設されるところもある。多機能を維持するには、事業や経営の専門家が運営に携わる。屋根には太陽光発電設備が施され、環境への配慮も忘れない。 “まちなか”は、車中心社会になって「アクセス」(交通の便)の良い郊外型ショッピングセンターに人が流れたが、人口減少・高齢化社会を迎えるいま、人々の視線は、再び人間中心社会に適した「ロケーション」(立地条件)の良い街中に回帰しはじめた。

先だって、関西を代表する交通ターミナルの大阪駅北地区に、大規模球技場誘致を検討する協議会が、自治体や財界のトップを交えて発足した。ここは、一日に250万人もの人々が行き交う絶好の場所である。北九州や宇都宮にも具体的な動きが見られる。いよいよ、我が国でも、「街中スタジアム」の時代が到来する。 Jリーグスタジアム観戦者調査2009によれば、過半は家族連れ。郊外にある埼玉スタジアムに5万人、新潟ビッグスワンに4万人、大分ビッグアイに2万人もの人々が、試合のたびに集まって来る。もしも、これらが街中に在ったらどうだろうかと考えると、地方都市が悩んでいるまちなか復活の“青い鳥”は、意外と身近なところに隠れている。