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コラム

Jリーグ副理事長 原博実が試合解説“イイ時間帯ですね。”

2016/9/8 20:00

鳥栖、2ndステージ躍進の要因に迫る【明治安田J1 2nd 第10節 鳥栖vs新潟】(♯6)

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サガン鳥栖が2ndステージに入って好調だね。第10節を終えて、6勝3分1敗で勝点21を確保。首位川崎フロンターレと勝点1差で堂々3位につけている。この間、その川崎Fや1stステージを制した鹿島アントラーズを撃破するなど、その勢いはもはや本物と言っていいよね。鳥栖はなぜ強くなったのか。第10節のアルビレックス新潟戦の映像を見ながら、その好調の要因に迫っていこうか。

■フォーメーション
鳥栖のフォーメーションは今のJリーグでは珍しい形の4-3-1-2を採用している。カギを握るのは中盤下がり目の3人。サッカーでは通常、4人もしくは5人で中盤のエリアを守っている布陣を良く目にするけど、鳥栖はトップ下の鎌田 大地を除く3人で横75メートルをカバーしているのが特徴的。このフォーメーションでは、豊田 陽平と2ndステージから加入したムスタファ エル カビルを2トップとし、2列目に鎌田を配置して個々の攻撃力を最大限に引き出そうとする狙いが見える。

■鳥栖の中盤3人の運動量
一方で、その3人の選手には当然守備の負担が増える。ただし、2ndステージに入って鳥栖は失点数が大幅に減少しており(10試合で9失点)、守備の安定性こそが、躍進の要因となっていることは間違いないね。では、なぜ中盤の人数が少ないのに守備力が向上しているのか。それを可能としている要因の一つに、中盤の選手たちの運動量にある。

真ん中に高橋 義希、左に福田 晃斗、右にキム ミヌを配置した鳥栖の中盤は、とにかくよく走っているよ。新潟戦のトラッキングデータ を確認しても、高橋の12.072kmを筆頭に、キム ミヌは11.566km、福田は11.255kmと、いずれも11km超えの走行距離を記録している。ちなみに勝利を収めた第8節の川崎F戦 でも3人は12km近く走っていた。

■3人の守備
映像を見てもよく分かるように、鳥栖の守備はとにかくボールホルダーに3人がスライドし、スペースを無くすようにしている。相手がサイドでボールを持てば、ピッチの4分の1 のエリアにほとんどの選手が入り込んでしまうほど密集してくる。これによりひとりが交わされても、次の選手が再びプレスをかけることが可能となるんだね。

例えば相手が鳥栖の右サイドを起点に攻撃を作ろうとすれば、キム ミヌがプレスを仕掛け、次に高橋、さらに左サイドから福田が右にまで走ってきて、エリアをカバーする。後ろで凌ぐのではなく、いかに高い位置でボールを奪い取れるかどうか。このアグレッシブな守備にこそ、鳥栖の真骨頂が見えるよ。

もちろん2トップやトップ下の鎌田も守備を疎かにしているわけではないけど、やはり肝となっているのは高橋、福田、キム ミヌの3人。とりわけ守備に限定すれば、キム ミヌは攻撃も求められるだけに、高橋と福田の2人の存在がクローズアップされる。

■福田の能力
なかでも特筆すべきは福田だね。1stステージの序盤は出場機会に恵まれなかったけど、6月頃からレギュラーに定着すると、2ndステージでは完全に欠かせない存在となっているよね。守備で頑張るだけでなく、素早く切り替えて攻撃に出ることもできる。福田の出場機会が増えたのと鳥栖が調子を上げてきた時期が重なっているのは、決して無関係ではないと思う。ちなみに鳥栖のファン・サポーターなら当然ご存知でしょうけど、福田は「フクダ」ではなく「フクタ」と読みます(笑)。この機会にぜひとも覚えていただきたいね。

福田の良さが現れたシーンを2つピックアップしてみた。一つは、相手が2対1の数的優位な状況を作りカウンターを仕掛けようとしたシーン。福田は見事な対応を見せてこれを阻止している。こういう場面では、普通はボールホルダーに寄せるとワンツーで交わされてしまう事を恐れ、なかなかボールを取りに行けないのだけど、福田は躊躇なくボールに向かっているよね。案の定ワンツーで行かれそうになるのだけど、福田は出されてもすぐに寄せ、また出されても再び追いかけて、最終的に後方で待ち構えていたセンターバックが新潟の攻撃を食い止めることに成功している。

二つ目は、攻撃時にボールを失った後の素早いインターセプトのシーン。サイドから駆け上がってきた吉田へパスを出した後、そのまま吉田のカバーに入りリスクマネジメントをしている。鳥栖がボールを失った瞬間には次のプレーを予測し見事なインターセプトから新潟のカウンターを防いでいた。

この粘り強い守備こそ高く評価されるべきだと思っている。昨季プレミアリーグを制したレスターのカンテを彷彿とさせるプレーだよね。中央に位置し、広範囲をケアする高橋も含め、この2人こそが鳥栖の躍進を支える影の立役者と言っても過言ではないね。

■まとめ
今季よりチームを率いるフィッカデンティ監督は、シーズン当初はなかなか結果を出せずに苦しんでいたよね。FC東京で成果を出したやり方に引っ張られていた部分もあったかもしれない。でも、シーズンを過ごす中で、鳥栖には鳥栖の選手に合った最適なやり方があることに気付いていったのだと思う。もちろんイタリア人だから譲れない哲学もあったと思うけど、そのなかで鳥栖の選手の能力を見極めながら、ようやくこのチームに適したスタイルを見出した印象だ。

今週末にはひとつ上をいく2位の浦和レッズとの直接対決が待っている。よく、浦和対策として、フォーメーションを3-4-2-1としたミラーゲームに持ち込もうとするチームが多いけど、フィッカデンティ監督は果たしてどういったプランを懐に忍ばせているのか。今のやり方に手ごたえを感じている一方で、対策を敷いてくる可能性も十分に考えられる。いずれにせよ、今の鳥栖の勢いを考えれば、浦和相手にも互角以上の戦いを演じるかもしれないよ。週末が待ち遠しいね。

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