静岡県の御殿場で今日から14日までの3日間、女子代表「なでしこジャパン」のキャンプが始まった。選手たちにとって、このキャンプはアテネ行き18人のメンバー発表（15日）を前に、最後のアピールの場となる。いよいよ……だ。
　
　初日の今日、選手たちは3時半過ぎに御殿場のキャンプ地に到着し、早速4時半から練習を始めた。練習開始と同時に曇り空からは雨が落ちてきた。選手たちは昨日それぞれのチームでLリーグの試合をしてきたこともあり、相当な疲労をかかえており、今日はクールダウン中心の軽いメニュー、およそ1時間程度で練習を終えた。
「今回のキャンプで最終メンバー18人に絞り込む」と、かつてから上田監督に言われていたこともあり、選手たちには自然と緊張がみられる。生き残りをかけたサバイバル、これまでのキャンプとはまた少し様子が違って見える。

　上田監督は18人の絞込みに「本っ当に、むずかしいですよ」と本音をもらした。「実際にまだ悩んでいます」と、誰も落としたくないという気持ちをのぞかせる。
　18人の選考ポイントについて上田監督は、大きく2つのポイントをあげた。まず「18人の中でのそれぞれのポジションのバランス、いろいろなケースを想定してそのバランスがいちばんよくなるように」ということ。そして「選手一人一人のパフォーマンス。今回の合宿、これまでの試合、そしてLリーグでのパフォーマンス、その中で安定した力を出せていたか」ということ。
　18人の選考にともない、今回キャンプに参加している23人から5人が外れることとなる。当落線上にいる選手はそれぞれが複雑な心境をもらしつつ、思いっきりこの3日間で最後のアピールをすることを口にする。「すごくドキドキしています。でも、思いっきりやるしかないから」と笑顔を見せるが心の中は不安、恐怖、そして希望と、複雑な気持ちで毎日を過ごしていることだろう。上田監督はその様子に「あまり競争意識をあおりすぎないようにしないと、必死にやりすぎて怪我をしてしまう恐れもあるから」と慎重に見つめている。

　今回のキャンプには何よりも明るい話題がひとつ。昨日行われたLリーグの試合（日テレ・ベレーザ vs 伊賀FCくノ一）で実戦復帰を果たしたエース澤穂稀選手が同じメニューでの練習を始めることとなった。昨日のLリーグでの復帰戦では途中投入され、4分後には見事にゴールを決め、存在感を見せつけた。その様子に上田監督の表情が自然とほころんだ。「びっくりしちゃった。本当に嬉しい！この後も心に残る得点です」と澤選手本人も試合後はとびっきりの笑顔を見せ喜びを表し「アテネ五輪まで1ヶ月ある中で、しっかり90分できるコンディションに戻したいと思います。メダルがとれるようにがんばっていきたいと思います」とアテネにむけて決意を新たにした。

　さて、いよいよ1ヶ月後に迫ったアテネオリンピック。前回のJビレッジで行われたキャンプでは「初戦のスウェーデンを相手に『勝つ意識』を選手に共通意識として持たせること」を目的にあげた上田監督。今回は「ナイジェリアというアフリカのチームに対して、勝てない相手ではないということをしっかりと意識に植えつけたい」という目的をあげた。試合をしたことがないアフリカのチームに対し「身体能力の高さ」に恐怖を覚える選手がいることを感じ取っている上田監督、その不安を拭い去りたいと言う。
　強豪スウェーデンと、これまでに対戦経験のないアフリカのチームへの恐怖感を選手たちの意識から消していくことが大きな目的。すべてはグループリーグをトップで通過するため、そしてその先のメダルのため。そのためにまず、夕食後にはビデオを使って対戦相手の特徴やウィークポイントなどについて選手たちに説明が行われた。

「全力で戦った前日のLリーグの試合での疲れと、体の痛みが想像以上のもので、今回のキャンプで予定していた実戦に近い練習ははどれくらいできるかわからないですけど、様子を見ながらやっていきます」と話す上田監督。
　この日の練習後、選手たちはキャンプ地にある温泉とサウナで疲れきった体をほぐし、心身ともにリフレッシュした。明日は朝9時半からと夕方4時からの2部練習、生き残りをかけて、そして1ヶ月後に迫ったアテネに向けて彼女たちの戦いは休むことなく続く。

がんばれ！なでしこジャパン！

2004.7.12 Reported by 日々野真理


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