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【J2日記】水戸:ホーリーピッチ、水没!(11.09.23)

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提供:水戸ホーリーホック

21日に午前7時頃の「ホーリーピッチ」の状態。グラウンドがどこにあるかまったく分からない状態。完全に川に飲み込まれてしまいました。

提供:水戸ホーリーホック

午前9時半ごろの状態。無惨に見えるコーナーフラッグ。これほどの高さまで水に覆われてしまいました。

提供:水戸ホーリーホック

午前9時半ごろの状態。ネットの上部が見えることで、かろうじてグラウンドと川の境目が分かります。

(C)佐藤拓也

午後2時ごろの状態。だいぶ水がはけ、グラウンドが顔を出しています。ですが、グラウンドは泥だらけ。当分使用できそうもありません。

21日に直撃した台風の影響により、那珂川が氾濫。川沿いにあった水戸の練習場「ホーリーピッチ」は水没してしまいました。

元々、その場所は川がよく氾濫することで有名な場所でした。いつかは“そのとき”が来るだろうと覚悟はできていたつもりです。しかし、いざ、その光景を見ると愕然としてしまいました。

「ホーリーピッチ」は単なる練習場ではありません。水戸の希望が詰まった場所だったのです。

97年のクラブ発足以来、水戸は練習場もなく、毎日茨城県内のグラウンドを転々とする日々を過ごしていました。時には雑草だらけのグラウンド、時にはマウンドの跡が残っているようなかつて野球に使われていたであろうことが容易に想像つくグラウンドで練習することもありました。約10年もの間、「プロ」と言うにははばかれるような環境で活動していたのです。

「いつか自分たちのグラウンドがほしい」。それが水戸に携わるすべての人の思いでした。そして、フロントの方の尽力により、06年8月、以前川の氾濫により、移転してしまったホテルの跡地を市から借り、練習場として使うことを許可されることとなったのです。それは水戸ホーリーホックにとって、念願でもあり、悲願でもあり、夢がかなった瞬間でありました。

そして、みんなの思いが詰まったグラウンドということもあり、選手とサポーターが一緒になって、芝の種をまいたのです。「本当に芝が出てくるのかな?」と本間幸司選手は思ったようですが、見事にしっかりとした芝が生えそろい、水戸の練習場が誕生したのです。オープニングセレモニーに訪れた鬼武健二チェアマン(当時)は「Jリーグでも指折りの素晴らしいグラウンドですね」と絶賛してくれました。

「自分たちの練習場ができるということは、家ができるということなんですよ」。グラウンド作りの功労者である小林寛氏(当時の社長)は語っていました。毎日決まった練習場があり、遠征から帰ってきても戻る場所がある。それだけで選手たちの精神的にかなり大きな効果があるということでした。実際、ホーリーピッチが出来る前を知る本間選手は「自分たちのグラウンドができて、本当に心強くなりましたね。毎日好きなだけ居残り練習ができるし、軽いトレーニングもすることができる。オフのときには家族を連れてきて遊んだりできましたし。震災の後もここで走り込むことができました。いつもそばにある家の庭という感じでしたよね」とホーリーピッチのありがたみを語りました。

かつてホテルが建っていた場所ということで地面が堅く、そして、震災により、地面がデコボコになってしまいました。そうしたことも踏まえ、他のグラウンドを利用することも少なくありませんでした。それでも、「ホーリーピッチがある」ということが、チームにとっての大きな支えになっていたのです。

水が引けば、すぐに使用できるようになるわけではありません。その後、グラウンド内に流れ込んだごみやヘドロをかきださなくてはなりません。そして、グラウンド全体を消毒する必要もあります。さらに、芝をもう一度養生しなくてはならないですし、ネットも立て直さなければなりません。いつ使えるようになるかは、今のところ未定のようです。当分は茨城県内の様々な練習場を借りる、“以前の姿”に戻ることとなるのです。

震災に続き、なぜ水戸がこれほどまでの仕打ちを受けるのかと思わずにはいられません。しかし、柱谷哲二監督をはじめ、選手たちはこの試練にも打ち勝とうと強い意志を示しています。「『もっと頑張れ』という試練を与えられているのだと思います。震災を乗り越えられたんだから、今回も乗り越えられますよ」と柱谷監督は力を込めて語ってくれました。本間選手も「震災のことも忘れてないですし、そこから立ち上がる術も震災から教えてもらいました。今年中に使えるようにするために、できることは何でもしたい」と上を向いていました。

ただ、これも若い選手たちにとって、いい経験なのかなとも思います。今の水戸でホーリーピッチができる前を知っている選手は本間選手だけです。そのほかの選手は「練習場があるのが当たり前」と思っていることでしょう。水戸駅から歩いて数分のところに練習場があり、選手寮も道を挟んですぐのところにあります。そうした恵まれた環境でこれまで練習することができていたのです。でも、それは“当たり前”のことではないのです。クラブ発足以来、1人1人が尽力してきた、その上にホーリーピッチはあるのです。そのことをもう一度噛みしめるチャンスなのだと思います。「実際に使えなくなってから、グラウンドのありがたみが分かると思いますよ」と本間選手は語ります。若い選手たちがさらなるハングリー精神を培ういい機会であり、サッカーができるありがたみを知るいい機会になるものと期待しています。

また、クラブ全体にとっても「ホーリーピッチ」の存在価値を考えるいい機会になったとも思います。ホーリーピッチができた当時、小林氏や前田秀樹元監督などは、このグラウンドを拠点に総合スポーツクラブを目指すビジョンを語っていました。それを見つめ直すチャンスなのだと思います。奇しくも柱谷監督は22日の取材で、小林氏や前田元監督と同じ意見を述べていました。「ホーリーピッチ」をこれからどう活用していくのか。クラブに携わるすべての人が知恵を出し合って、考えていくべきでしょう。

震災に加え、今回の台風で水戸は大打撃を食らいました。でも、柱谷監督は下を向くことなく、こう口にしました。「全部受け止めて、跳ね返してやる」。度重なる苦難を乗り越えたとき、水戸はまた強くなることでしょう。「降りかかるすべてを糧にしながら前に進め」。水没したホーリーピッチが、そう訴えかけているような気がしました。

以上

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2011.09.23 Reported by 佐藤拓也
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