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omiya

2008/12/18

養護学校の生徒によるユニフォームクリーニング活動

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試合前の選手入場時。選手たちが手を高く上げてユニフォームのエンブレムをつかみます。「袖を通すことによって、自分に一気に気合が入る。その試合に向けての気持ちを高めてくれるひとつの大事なアイテム」(大宮アルディージャ/GK江角浩司選手)というこのオレンジのユニフォームには、ある子どもたちの想いが込められています。

埼玉県新座市。床まで磨き抜かれた清潔なその部屋は、大宮アルディージャのユニフォームクリーニングを一手に担う株式会社モビメント埼玉工場の作業所です。中央に置かれた大きなテーブルを囲むように懸命にユニフォームを畳むのは、重複障害を持つ子どもたち。指先を動かすことができる、肢体が不自由など、その障害は異なります。手元を見つめる子どもたちの表情は真剣そのもの。お母さんやサポートの大学生たちの手を借りながら取り組んでいきます。達成感に満ちた笑顔を見せ、“自分がやりたい”と互いに競うような光景も見られます。

彼らは和光養護学校に通う中学二年から高校三年までの子どもたち。学校やデイサービスへ通い、生活のリズムを刻んでいます。「卒業したら、この子たちはどうなるんだろう」と、未来への思いを馳せ、自立の道を模索する親御さんたちの“この子どもたちが安心し、自立して過ごせる場所を作るために”という気持ちから、平成19年9月、NPO法人コットンドリームが設立されました。

「衣食住のひとつ、衣で生活を立てていくことを決心したんです」とは、ユニフォームのクリーニングや販売、レンタルを行う株式会社モビメントの代表取締役の桶本義孝氏。創業者である桶本さんは快活な口調で語ります。「汚れているものは落とす。恥をかかない仕上げでお客様にお届けする。当たり前のことをしっかりと行うだけです」。

2004シーズンに悲願のJ1昇格を果たした大宮アルディージャが、大宮を中心にユニフォームクリーニング業者を探す中で出会ったのが株式会社モビメントでした。「桶本さんのモビメントは、消臭から畳み方まで、抜群の仕上がり具合でした」。そう振り返るのは、当時、クラブの強化本部に籍を置いていた現クラブ広報の秋元利幸氏。その言葉に桶本さんは「秋元さんが良いと思ってくれた。他の人だったらどうだったのか。これが縁というもの」と話します。

そしてJ1で4年目となった今シーズン。「埼玉工場にはアルディージャ専用の作業スペースがある。この場所で何かできないか」。仕事を求める身障者のNPO法人に洗濯機材を提供し、作業を発注するビジネスモデルに実績のあった桶本さんは、アルディージャのユニフォームを洗濯してくれる人を探し始めました。「じつはアルディージャさんには何も知らせずに始めたことでした。でも絶対喜んでもらえると」。その話がコットンドリームに届くこととなります。身障児の母でありコットンドリーム事務局員の鹿沼さつきさんは、「NPOの理事長から、まずは話だけでも聞いてみて下さいと言われて」と当時を振り返ります。

5月の連休後。仕事を受けるか躊躇していた鹿沼さんの背中を押したのは桶本さんの「スイッチひとつ押すだけでも、仕事ではないですか?」という一言でした。すぐに研修が始まり、6月からは週3回、その後週7日での契約依頼となりました。そして8月に正式契約。まずは母親が全面的に取り組み、休みには子どもたちが作業所へ。「ソックスやユニフォームは裏表になっていたりしますから裏返すことから始めます。漂白剤は使わず、落ちにくい汚れはブラシに洗剤をつけてこすります。洗濯後はしわにならないように台の上に広げ、それを畳んでいきます。毎日の練習着はランドリーボックス4袋程度ですが、試合着は数が増えますので、多い時は19袋程度までいきますね」(鹿沼さん)。契約料金の中から学生たちにアルバイト代を払い、子どもたちの工賃を出すなど、あくまでもビジネスとして継続できる体制づくりに重点が置かれています。「NPO法人としての目標は子どもたちだけで自立して生活できるグループホームの設立です。そのために毎月貯金をしています」という鹿沼さんは、子どもたちの自立について「一人では何もできなくても、他人の手を借りながら生きていくこと。それを体制として整えたい。子どもたちを、日なたに出してやりたいのです」と熱を込めます。

「袖を通すことで、オフからオンに、普通の若者から選手へと彼らは変わります」と打ち明けたのは、日々選手たちを至近距離で見つめている大宮アルディージャの池田享平マネージャー。そして、野中宏光マネージャーも言葉を継ぎます。「その街に住む人に活力を与えたり生きていく力になれるなら、それがクラブの存在理由のすべてだと、私はそう思っています。ユニフォームを着られるのはチームの中でも選ばれた人間です。試合当日にユニフォームに袖を通すのは18人ですが、何人もの人の思いを身にまとって、彼らはピッチに立って戦っています」。

「モビメントさんの活動は、言葉にしないと分からないことです。それを伝えていくことで、お母さんたちの言葉を借りれば、まさに“日なたへ出す”ということになります」と秋元さん。

大宮アルディージャのクラブハウスのウェア倉庫には、いつも洗いたての練習着が整頓されています。「汚れが多いと、今日は練習頑張ったんだね、と子どもたちと話しています」と鹿沼さん。また別の一角には試合着もあり、「子どもたちと勝った、負けたと話しながら盛り上がります。クラブの公式サイトではコメントを全部読んで、写真も見ています。試合を観ている時は、つい襟を見ちゃうんですよね。クリーニングの仕上がりが気になってしまって」。

今もユニフォームは光を浴びる時を静かに待っています。「キレイにするということは、“復元する”ということです。汚れを落とし、白いものは白く、艶まで元通りにするということです」(桶本さん)。洗い立てのユニフォームはすでに、自ら光りを放つかのように輝いていました。

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