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コラム

百年構想のある風景

2015/1/12 10:00

平和の使者

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戦後まもなく高知市で生まれた「よさこい祭り」は、半世紀を経て全国百カ所を超す地域に伝播し、中心市街地の活性化にも一役買っている。原曲の一節を音楽に入れて鳴子を手に持つルールさえ受け継げば、踊り、音楽、衣装は自由に表現できるので、小さな町にも門戸は開かれる。スポーツもまた、地域や人々の心に幸せをひろめる「使い」である。19世紀に英国で生まれたサッカーは、ヨーロッパ人の新大陸移住とともに、アメリカ(1862)南アフリカ(1865)アルゼンチン(1867)など世界各地に瞬く間に伝播した。

世界最古のサッカークラブは、1857年に設立されたシェフィールド・フットボールクラブである。今日のルールブックは、当時のメンバーらによってその原形がつくられたという。人口50万人の鉄鋼の町シェフィールドには、現在ウェンズデーとユナイテッドの二つのビッグクラブがあるが、シェフィールドFCはプロ化には進まなかった。1904年の英国協会アマチュアチャンピオンという輝かしい栄光以外に、150年の長い歴史の中に然したる誉れはなく、トップチームは8部リーグ界隈でプレーしている。 10年ほど前、現会長のRichard Tims氏が就任するとクラブの経営方針は一変した。今ではトップチームの他に、下部組織や世代別の女子チームなどが充実する総合型サッカークラブに変身している。2年前にクラブを訪れたとき、Tims会長は、「自分たちのことを“The Club”と呼んでほしい」と我々に語り、その誇りの高さを感じた。 この『世界最古のクラブ』という、他にまねできない誇りをセールスポイントにして、世界各地で“サッカーの使者”を演じて歓迎されている。

アメリカでは、世界最古のバスケットボールクラブを訪れ、イベントを共催した。2008年、創立150周年の記念行事として、強豪インテル・ミランやアヤックス・アムステルダムを地元に迎えている。小さいけれども、“さざなみ”は静かにその輪をひろげている。よさこい祭りもシェフィールドFCも、こうした伝播の動きは未だ止まない。 広島市の2020年オリンピックの招致活動には、世界平和を発信する狙いがある。ならば、広島市を本拠地とするサンフレッチェ広島の存在を生かさない方はない。Jリーグには、アジアや世界が注目する大舞台も毎年用意されている。世界共通語である“サッカー”は、なによりの「使い」となるだろう。準加盟クラブのV・ファーレン長崎とともに、Jクラブが世界に発信する「平和都市からの使者」を演ずることはできないものだろうか。 ここにも、投げた小石がつくりだす“さざなみ”がある。