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第18節 6.16(日) 14:00KO 国立競技場 神戸vs川崎F 国立競技場に小中学生合計10,000名様を無料ご招待
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コラム

百年構想のある風景

2015/1/30 10:00

方言

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ロンドン五輪のなでしこJAPANを応援するために、英国カーディフにあるミレニアム・スタジアムを訪れた。この地域には、ウェールズ語という地元の言葉があり、英語は第二外国語の地位にある。この言語を次世代まで絶やさないように、小学校の授業では必修科目だそうだ。新聞、テレビ、高速道路から街中に至るあらゆる標識は、まずウェールズ語ありきだった。 ドイツの全国紙フランクフルター・アルゲマイネに、岡崎慎司選手や酒井高徳選手がプレーするシュツットガルトのあるバーデン・ヴュルテンベルク州政府の面白いプロモーション記事があったことを思い出した。

一面全体を使い、ただ一言「我々は、"標準語"以外なら、何でも可能です。」市民にとって、この地方で使われるシュヴェービッシュ語は、誇りそのものである。 わが国では、地域に根ざした土地の言葉を"方言"(○○弁)と呼ぶ。自分自身、南国土佐を後にして約40年経つが、故郷の土佐弁を忘れることはない。その社会的な価値は、時代とともに大きく変化してきた。 江戸時代には、互いのお国言葉で各藩士が会話を交わしていたが、明治維新から近代になると、国民の共通語として定められた"標準語"の使用を日常会話に強いられるなど、一時方言は撲滅の一途をたどった。戦後のラジオ・テレビの急速な普及は、情報発信のほとんどが東京発であることも加わって標準語の全国化を助長し、方言を口にすることが恥ずかしい、かっこ悪いと思う時代が長く続いた。

高度経済成長期が終わり地域開発が国家の重要な政策課題になった1980年代から、方言の価値が再び認識され始めた。最近では、逆に標準語しか話せない都会の若者たちに、「今日は暑いゼヨ。」などと語尾の言い回しを変える、いわゆる『方言コスプレ』が新たな価値を生んでいる。こうした流れの中で、1993年Jリーグは誕生し発展してきた。Jクラブの名称にも、方言に由来するものがみられる。カターレ富山は、「勝て」を意味する富山弁の「勝たれ」から、ガイナーレ鳥取は、出雲・伯耆地方の方言で「大きな」を意味する「がいな」から生まれた。 言葉は思いを表現しており、方言は、地域のアイデンティティとして受け継がれるべき文化である。Jリーグも、共にそうありたい。地元の方言を使ってホームの存在感を存分に演出できないだろうか。地元出身のアナウンサーや解説者が、方言丸出しの実況中継をする。特に応援歌は、方言を基本バージョンにしよう。もしそこに、明治の歌人の石川啄木がいれば、こんな短歌を詠んだにちがいない。 ~ふるさとの 訛り(なまり)なつかしスタジアムの アウェイの中に そを聴きにゆく~