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コラム

北條 聡の一字休戦

2015/5/14 13:46

ゴーテンイチゴーは そこに「いつも」いる(♯11)

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もうすぐ5・15(ゴーテンイチゴー)―――。
Jリーグの「誕生日」ですね。開幕戦は1993年5月15日ですから、今年で22歳。サッカー界で言えば『オリンピック世代』ですか、来年開催されるリオデジャネイロ五輪の。プロリーグの「プロ」という言葉の意味に重きを置けば、1993年は 「社会人1年目」とも言えるでしょうか。ということは「同期」ですね、僕と(強引ですが)。何だか石川啄木の一首が頭に浮かんできます――友がみな、我よ りえらく見ゆる日よ……。

Jリーグは1993年5月15日に開幕した。
Jリーグは1993年5月15日に開幕した。

いや、友(Jリーグ)の立身出世をうらやんで「ゴーテンイチゴー」を思い出したわけじゃありません。師の教えを思い出す日なんです。師とはラモン・ディアス。あの開幕戦(ヴェルディ川崎1-2横浜マリノス※表記は当時)で決勝点を記録したマリノスの主砲ですね。1959年8月29日生まれですから、当時33歳。こちらは僕と同期じゃなくて誕生日が一緒という関係 で……ってヨタ話はともかく、師(ディアス)から教えてもらったのです。あのことを。

開幕戦はヴェルディ川崎vs横浜マリノス(※表記は当時)。
開幕戦はヴェルディ川崎vs横浜マリノス(※表記は当時)。

 

『そこに、いる』
それが、大事と。イチバンかどうかはともかく。あの決勝点は、観る者たちに「なんで、そこにいるの?」と思わせるゴールでした。ウナギのような動きでヴェルディの守備陣をすり抜けた水沼 貴史(現解説者)さんのシュートをGKの菊地 新吉さんが弾き、カバーに戻ったDFのペレイラと処理にもたついて、ほんの少し脇へこぼれた先に、師は「いた」のです。厳密には後ろから「走り込んだ」ですが、あの場所(そこ)に到着するのが速すぎても遅すぎても、あの得点は生まれ ていなかったでしょう。まさに「あの瞬間」に「いる」ことが、とても重要でした。

間(ま)――タイミングの話ですね。日本のサッカー界では、こぼれ球に絡んだ得点を『ごっつぁんゴール』と言います。そこに「たまたま」いたことの幸運を強調する呼び方ですね。ということは『ごっつぁんゴール』の多かったディアスは、同じストライカーの中でも特別に運に恵まれた人ということになるわけですが……。そりゃ、そうですよ。こぼれ球って、どこに転がるか分からないんだから。いくら「そこに、いろ」と言われたって、練習でうまくなるわけじゃないでしょ――。この件について、もう一人の師がこんな話を していたような記憶があります。

こぼれ球への鋭い嗅覚を示したディアス(横浜)。
こぼれ球への鋭い嗅覚を示したディアス(横浜)。

「こぼれ球が『そこ』に転がってくる――そう思って、いつもプレーしていたよ。でも、その通りに転がってくることなんて、めったになかったね」
ドイツの伝説的ストライカー、ゲルト・ミュラーのことです。現役当時には『ごっつぁんゴール』を量産し、どこにボールが転がってくるかが分かる『第六感』の持ち主とも言われていました。ところが、師いわく「そんなもの、ありゃしない」と。思いどおりにボールが「そこ」に転がって来ないのですから、特別に運が よかったわけではなさそうです。このギャップは何しょうか?

そこで、ふと思い出したのが先日、テレビでキャシー中島の話していたエピソード です。ダンナ様の『テキサス刑事』(勝野洋)を口説き落とすため、行きつけの店をリサーチし、毎日のようにそのお店に通って、テキサスが来るのを待っていたのだと……。やがてテキサスはこう感じるようになったそうです。店に行くたびに、彼女も必ず来ている……これは偶然じゃない。運命だ!――と。

いつ転がってくるかも分からないこぼれ球(テキサス)をゴール前(行きつけの店)で待ち続け、やっと転がってきたときに「あら、偶然ね!」などと知らぬ顔をし、まんまとゴール(結婚)を決めてしまったキャシー中島――恐るべし。いつ、いるの? 「いつも」でしょ! 観る者に運命(幸運)と感じさせる『ごっつぁんゴール』の奥義でしょうか。肝心な時に、いつも、そこに「いない」自分のダメさ加減を戒める。この先、僕にとっての『ゴーテンイチゴー』は、そんな日になりそうです。そのたびに、また思い出してしまうんでしょうか……キャシー中島のことを。