状況としては、相手センターバックがサイドバックへパスを出した瞬間、ここがプレッシングの合図となります。ウイングはその瞬間に一気に前へ出てプレッシャーをかけます。遅れず、迷いなく。ここからプレッシングが始まります。同時に、周りの味方選手も連動してボールサイドにスライドしスペースを圧縮します。相手は前を向く時間も余裕もなくなり、ファーストタッチの瞬間をデュエルに持ち込みます。
この守備の考え方がロジャー・シュミットのボールを基準としたプレッシングの本質です。
このモデルでは、マンマークの対応は行いません。
その代わりに、常に複数の相手の間にポジションを取りながらプレーします。基準となるのは、ボールの位置と味方の動きです。選手はスペースを管理し、パスコースを制限しながら相手の選択肢をコントロールします。
そして、ゲームの状況に応じて、必要な瞬間に一気に前へ出てプレッシングに移行できる準備を常に整えています。
この導入となる1対2のトレーニングは、こうした守備の原則とプレーの土台を身につけるためのものです。
すべてのポジションに共通して重要であり、この後に続くプレッシングトレーニング全体の基盤となります。
ロジャー・シュミットは、このトレーニングにおいて3つの重要なポイントを提示しています。
このトレーニングは一見シンプルに見えますが、すべての設定はこの3つの動きを引き出すために設計されています。
ルール
各ディフェンダーは3回連続でプレーした後に交代する。
シンプルな構造。明確な目的。高い強度。
1. どんな状況にも対応できるスタートポジションを取る
ボールが出る前の段階で、ディフェンダーは2人の相手を同時に対応する必要があります。これは実際の試合におけるボール基準の守備と同様であり、特定の相手をマークするのではなく、常に複数の相手の間にポジションを取り続けることが求められます。
重要なポイント
ディフェンダーは、能動的にスペースをコントロールすることを学びます。
そして、決定的な瞬間に前へ出てプレッシングできる準備を常に整えておきます。
2. パスを合図にプレッシングする
ロジャー・シュミットのプレッシングモデルでは、迷いがあっては、プレッシングは機能しません。パサーの足がボールに当たった瞬間、ディフェンダーは一気に前へ出なければなりません。
ディフェンダーに求められること
これはロジャー・シュミットのプレッシングにおける基本原則を強調しています。
すなわち、連動したアグレッシブな守備は、即時の反応から始まるということです。
3. ボールを奪い切る意図を持ってプレッシングする
3つ目のコーチングポイントは非常に重要です。ディフェンダーは相手を遅らせるためにプレッシングするのではありません。単にプレー方向を限定するためでもありません。ボールを奪い、そのまま攻撃につなげるためにプレッシングします。
相手に寄せた瞬間、ディフェンダーには次のプレーが求められます。
ディフェンダーがかわされた場合は?
プレーはそこで終わりません。すぐに次のパスに対して反応し、再びプレッシングをかけ続けます。この継続性こそが、ボールを基準としたプレッシングにおいて求められるメンタリティです。ボールを奪うか、プレーが切れるまで、守備は続きます。
このトレーニングで主体的なプレッシングを身につけるためには、設計だけでなく、指導の質も同じくらい重要です。トレーニングは実際のゲームモデルを再現する必要があり、同じ合図、同じ判断、同じ前方向への強度で守備を行うことが求められます。また、選手に適度な負荷とチャレンジを与えながら、複数の相手をコントロールし、狙い通りのプレーでボールを奪えるという自信を育てていく必要があります。
1. プレッシングの質を保つ
これにより、選手はフィジカル的にもメンタル的にもフレッシュな状態を保つことができ、毎回のプレッシングを効果的かつ正確に行えます。プレッシングの合図は、疲労した状態では身につきません。
2. 適切な難易度を設定する
5m × 5mのエリア設定には明確な意図があります。
目安として、守備の成功率は33〜66%程度が理想です。
これは、難しすぎず簡単すぎない「学習ゾーン」にある状態を示しています。
守備側がなかなかボールを奪えない場合でも、すぐにグリッドのサイズを変えてはいけません。まずはコーチングポイントを再確認します。
学習は快適すぎる状態でも、混乱した状態でもなく、適度に負荷がかかったゾーンの中で起こります。
3. 試行錯誤させる
最初からコーチングをし過ぎないようにします。選手に次のことを感じ取らせる時間を与えます。
タイミングは、繰り返しの中で自然と身についていきます。
コーチングは情報を詰め込みすぎるのではなく、3つのコア原則を強化することに集中します。
この1対2のトレーニングは一見シンプルに見えますが、ロジャー・シュミットのプレッシングの根幹となるプレーを引き出すトレーニングです。
この後のトレーニングでも、選手に求められることは変わりません。
変わるのは、スケールと全体の連動だけです。
プレッシングの文化は、いきなり11対11で生まれるものではありません。それはここから始まります。
わずか5メートルのスペースの中で。
一瞬の爆発的な反応の中で。
前へ出る勇気の中で。
そして本気で奪いに行く意志の中で。