グローバルフットボール
アドバイザー プロジェクト

Training 5

The 8v10 High Press
- ハイプレス -

ユニット連動からチーム全体での実戦へ

このトレーニングは、11対11の実戦へとつながる最終ステップとなります。これまでの4 つのトレーニングで学んだすべての要素を合わせ、試合に近い状況の中で実践する内容となっています。
これまでのトレーニングを通して、選手たちは段階的にプレッシングを学んできました。

  • 個人でのプレッシング(1対2)
  • 2人での連携(2対6)
  • ユニットでの連動(4対4+2)
  • ライン間の連動(7対7)

このトレーニングでは、これらすべての要素をチーム全体の構造の中で実践できるようにします。
8対10の設定では、4対4+2でトレーニングしてきた前線ユニットのプレッシングと、7対7で行った最終ラインの連動が組み合わされています。
さらに、このトレーニングでは新たに重要な要素が加わります。それが、守備ライン背後の「深さ」と「スペース」の管理です。
選手たちはこれまで以上に、前線から積極的にボールを奪いにいく守備と、背後のスペースを守る責任とのバランスを取らなければなりません。
これは、実際の試合において不可欠となる重要な要素です。

トレーニングの設定

このトレーニングは8対10+GKで行われ、守備側は相手陣内からハイプレスをかけます。

配置

  • ボール保持側(10人+GK)は1-4-2-3-1でビルドアップを行います
  • プレッシング側(8人+GK)は1-4-1-2-1で配置され、実質的には以下の選手が不足しています:
    o ボランチ1人 、攻撃的ミッドフィルダー1人
    o 機能的には1-4-4-2や1-4-2-3-1から2人欠けた形に近い構造となる

この構造は、4対4+2でトレーニングしてきた前線ユニットのプレッシングと、7対7で行った最終ラインの連動を組み合わせたものです。

ピッチ設定

  • 横幅はやや制限されている一方で、縦方向はこれまでのトレーニングより長く設定
  • 15メートルのゲートを3つ設置:
    o ハーフウェイライン中央に1つ
    o 攻撃側のハーフスペース内に2つ
    o 攻撃側は、シュートをする前に必ずゲートを通過しなけらばならない(グラウンダー・浮き球・ドリブルいずれでも可)
ピッチ設定

ルール

  • プレーは常にゴールキーパーから開始
  • 各プレーは最大30秒、またはボールがアウトになるまで継続される
  • フリータッチ
  • オフサイドなし

これによって、試合を想定した短く高強度の反復トレーニングが可能になります。

効果的な指導のポイント

1. チーム構造とポジショニング

選手は以下を意識してポジションを取ります:

  • 中央のスペースを閉じる
  • 前進を阻止する
  • 外側(サイド)へプレーを誘導する

すべてのラインは、コンパクトかつ連動した状態を保つ必要があります。
それにより、チーム全体でのプレッシングを支える安定した土台が形成されます。

チーム構造とポジショニング

2. 準備と相手間でのポジショニング

各ディフェンダーは以下が求められます:

  • 常に動き続けること
  • 複数の相手に対応できるポジションを取ること
  • マンマークに固執しないこと
  • 前・横・後ろすべての方向に対応して守備すること

これにより、ボール基準の守備において柔軟性と流動性が保たれます。

準備と相手間でのポジショニング

3. 前向きな守備とチームの連動

プレッシングは個人のアクションではなく、チーム全体で行うものです。
最もボールに近い選手が、まず即座にプレッシャーをかけます。
味方はそれに応じてサポート ・カバー ・ボール周辺へ絞ることを行います。
例えばサイドでプレッシングを行う場合:

  • ボールサイドのウイングが積極的に前へ出る
  • センターフォワードがプレッシングをサポート
  • ボランチが背後をカバーする
  • 逆サイドのウイングが中へ絞り、サイドチェンジを防ぐ
  • 最終ラインは横へスライド
  • ゴールキーパーは前に出て、背後のスペース(深さ)をコントロール

このようなチーム全体の連動によって、数的不利な状況でもボール周辺では数的優位を作り出すことができます。

前向きな守備とチームの連動

4. 深さのコントロール

これはトレーニングにおける最も重要な新しい要素です。ピッチが縦に長くなり、背後をカバーする選手がいない状況の中で、ディフェンダーは常にプレッシングをサポートすることと、背後のスペースを守ることのバランスを取らなければなりません。
深さのコントロールは個人の判断から始まります。
例えば、フォワードが中盤に下りて行った場合、センターバックは以下を判断する必要があります:

  • どこまで前に出てプレッシングをサポートできるか
  • どのタイミングでラインを維持して背後を守るか

しかしこれらの判断は常にチーム全体の状況によって決まります。
具体的には以下の要素です:

  • ボールへのプレッシャー
    (味方がどれだけ速く、効果的にボール保持者へ寄せているか)
  • 背後へ走り込む相手の脅威
  • カバーに入る最終ラインのポジショニングと距離感
深さのコントロール

このことは、深さのコントロールは特にセンターバック間における責任であることを強調しています。
一方のセンターバックが前に出て相手に付いていく、もしくはインターセプトを狙う場合:

  • もう一方はすぐに背後をカバーしなければならない
  • 最終ライン全体が連動してポジションを調整し、バランスとコンパクトさを維持する

さらに広い視点で見ると、前向きに守備を行えるかどうかは、ボールに対するチーム全体のプレッシャーの質に大きく依存します:

  • プレッシャーが強い場合
    → ディフェンダーはラインを高く保ち、積極的に前へ出ることができる
  • プレッシャーが弱い場合
    → 背後を突かれるリスクが高まり、より慎重な対応が必要になる

このように、個々の判断をチーム全体の状況に基づいてコントロールすること、
つまり「個人判断」と「チームの連動」のバランスを取ることが、実際の試合に近い状況の中で、効果的なハイプレスを維持するために不可欠となります。

5. 後方への守備

プレッシングが外された後も守備は続きます。各ラインは前からプレッシャーをかけながらリカバーします

  • 前線の守備が突破された場合 → FWが戻って相手の中盤に後ろからプレッシング
  • 中盤のラインが突破された場合 → 中盤が戻りながら後ろにプレッシング
  • 最終ラインが突破された場合 → 全体で素早く戻り、ゴールを守る

このような「後方への守備」の継続によって、 チームはコンパクトさを維持し、最初のプレッシングが外された後でもプレッシャーをかけ続けることができます。

後方への守備

6. 縦方向への素早い切り替え

プレッシングは攻撃のための手段です。ボールを奪った瞬間、チームはすぐに前へ向かわなければなりません。
このトレーニングにおける重要な場面の一つは、センターバックが相手フォワードへのパスをインターセプトする瞬間です。このとき求められるプレーは明確です。

  • 事前に周囲を確認し、最も前の選択肢を把握しておく
  • 可能であればファーストタッチで前進する

同時に前線の選手も、すぐにパスを受けられるポジションを取り、前向きにプレーすることを意識して攻撃を継続させることが重要です

縦方向への素早い切り替え

原則は非常にシンプルです

  • 最初のプレーは前方向へ
  • 素早く、迷いのない決断
  • 最小限のタッチ数

これにより、ボールを奪った際の価値を最大化し、すべての瞬間を得点チャンスへと変えることができます。

意図を持ったトレーニング設定と指導

このトレーニングの各要素は、それぞれ特定の行動を引き出すことを狙いとしています:

  • 8対10の数的不利 → チームとしての連動、ボール基準の守備、素早い判断
  • チーム構造 → 前線ユニットのプレッシングと最終ラインの連動の組み合わせ
  • 縦に長いピッチ設定 → 深さ、背後のスペースの管理
  • ゲートの設置 → プレッシングの方向性を明確にし、判断のトリガーを作る
  • 30秒制のプレー設定 → 最大強度でのプレー

コーチにとって重要な役割は、これまでに学んできた内容を、より複雑な環境の中で結びつけられるように導くことです。

まとめ

この8対10のハイプレスゲームは、11対11の実戦へと移行する前の最終ステップとなります。これまでの4つのトレーニングで学んだすべてのプレッシングの要素を、高いプレッシャーと戦術性を持った環境の中で組み合わせて行きます。
この最終段階の特徴は、以下の要素が組み合わされている点にあります

  • チーム全体の連動
  • 実際の試合に近い距離感
  • 効果的な深さのコントロール
  • 試合同様の即時トランジション

選手たちはもはや「プレッシングの方法」を学んでいるのではなく、実際の試合に近い状況の中で、ハイプレスをどのように発揮するかを学んでいます。
このトレーニングは、ロジャー・シュミットのプレッシングのアイデンティティを実戦へと持ち込むための準備となります。