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コラム

百年構想のある風景

2015/1/12 10:00

エンブレムは市民の誇り

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浦和は,昨年ACLで初優勝を飾るなど一躍「世界のレッズ」となった。浦和という地名は、今やさいたま市にある一区名に過ぎないが、エンブレム(紋章)を見ただけで誰もが認識できる存在である。 1993年Jリーグ開幕当初は親企業色の強かったエンブレムに、2001年J1復帰を果たした際に変化が訪れる。「浦和のレッズ」であること、つまり“地域のクラブの意識”を表現するため、楯形の最上部には埼玉サッカー発祥の師範学校の校舎を、下部の左右には県花「サクラソウ」を描きMITSUBISHIの文字は姿を消す。

G大阪、横浜M、川崎F、東京Vなどにも同様の動きがあった。 エンブレムとサッカーとの結びつきは古くて深い。「サッカー人間学」のデズモンド・モリスによれば、ユニフォームの左胸―心臓の上に配置されるのは、選手の心がクラブに帰属しアイデンティティの象徴を意味するから。ゴールを決めた選手がユニフォームの胸に軽くキスする光景が鮮やかに目に浮かぶ。 欧州クラブのエンブレムには、ACミラン、マンチェスターU、E・フランクフルト始めホームタウンの市章を基調にしたものが多い。中には、町の歴史・風景・産業などメッセージ性あふれる楽しいものもある。仏・シャンパーニュ地方のランスのエンブレムは、ボールの上にシャンパンの瓶が描かれる。パリ・サンジェルマンにはエッフェル塔が。この流儀でいけば、C大阪には通天閣か。 昨夏のベルリンで、ブンデスリーガのエンブレムに伝統の重みを感じた。

他会場で得点の都度スクリーンにスコアが紹介され観客席から喜怒哀楽の声があがる。驚いたことに、表示されるのはエンブレムだけ。観客は、エンブレムを見ただけでクラブ名がすべてわかってしまう。 米国スポーツ流のチーム呼称の親しみやすい“愛称”とともに、欧州の伝統から学ぶクラブの顔“エンブレム”は、いつまでも市民の誇りだ。