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コラム

百年構想のある風景

2015/1/12 10:00

名のない投資家

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クラブ名には都市名を冠し、企業名はつけない。これは、Jリーグが地域密着の証(あかし)として欧州のスポーツクラブより学んだことであった。ただ、誰もが知る二つの有名クラブには未だに企業名がついている。 一つはPSVアイントホーフェン(オランダ)、もう一つはTSVバイヤー04レバークーゼン(ドイツ)だ。両クラブともに信頼できる大企業の社会貢献のためにできたクラブ。この名前のもとで既に約百年の歴史と実績があり、長くサッカーの世界で受容れられている。 先月、そのアイントホーフェンにPSVを訪れた。

このクラブは、世界的な電器メーカーであるフィリップス社が1913年につくったスポーツクラブ。人口20万人の町にあり、現在では20種目5千人を超す会員がいる。 サッカーでは1978年UEFAカップ優勝、88年には欧州チャンピオンズカップを制した(同年のUEFAカップ優勝はレバークーゼン)。また水泳では、2000年シドニーオリンピックにおいて、所属選手のホーヘンバンドとデブルーインが合計8個のメダル(うち金メダル5個)を獲得する。 1980年代から同社は一スポンサー企業として経営には全く関与せず、クラブは普通のスポーツクラブに変わったという。フィリップス社との関係についてクラブ経営者に訊ねてみた。そのときの彼の言葉を忘れない。“名のない投資家”これがスポンサーやボランティアの本来あるべき姿であると。 クラブとは、ある同じ志をもった人々が集いメンバーシップによって集まった会費で運営されるもの。この「有志の力」は、クラブ予算が100億円を超すビッグクラブの時代においても経営の基本理念として存在し続ける。

クラブを本当に支援しようと思う人や組織は、自らの利益優先を考えることなく自分の顔は見えなくても良い。顔が見えない多くのスポーツを愛する“名のない投資家”によって、華やかなJリーグの表舞台は支えられている。