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コラム

百年構想のある風景

2015/1/12 10:00

10年に一度の日常

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フランクフルトに赴任したのは、1998年3月末のこと。6月のフランスW杯が間近に迫り、ドイツでもさぞ代表ムードだろうと予想したが、現実の話題は、終盤を迎えた国内リーグとチャンピオンズリーグの行方に集中。W杯モードに切り替わったのは、5月も半ば過ぎ。W杯も4年に一度の日常生活のひとコマ、これがスポーツ文化なんだと感じた。 2000年、もっともっと長い単位で日常を生きる人々の村を訪れた。南ドイツの人口5千人の小さな村、オーバーアマガウである。10年に一度、子供からお年寄りまで村人が総出で「キリスト受難劇(Passionspiele)」を上演することで世界的に知られている。 370年間も続く世界一の市民劇の起源は、村で黒死病(ペスト)により多くの死者が発生、祈祷の意味から村人全員がこの劇を演じたことに始まる。

病人が激減したため、神への感謝を込め、以後10年に一度上演されるようになった。次回は、2010年5月より秋にかけ計41回上演の予定である。 劇のある年には、50万人もの観光客が世界中から集まり、チケット収入だけで30億円を超す。劇のない残りの9年間は、その準備と練習がひたすら繰り返される。そのとき、村全体が一つの家族のようになる。 「この村で育った人間は、劇が自分の体の一部となり、ほかのまちで暮らそうとは思わなくなります。だから、この村には過疎の問題はありません。」と若者はうれしそうに語った。10年に一度ゆえに、「これが自分にとって最後の劇になるかもしれない」と、最終日には涙を流すお年寄りもいると聞いた。 IT社会に浸かっている現代人が待てる時間の長さは、カップ麺の3分間が忍耐の限度か。

一週間単位でホームとアウェイで繰り広げられるリーグ戦。ホームタウンに暮らす人々は、この一週間がどんなに長く待ち遠しい時間と感じられることだろう。 「文化」は、ある瞬間の「イベント」ではない。連続した「日常」の中にある。TV画面を通じて日本の祭りを観賞する人々にとって、祭りは単なる「イベント」に映るかもしれない。だが、祭りをつくり、祭りを生きる地元の人々には、粛々と継続する「日常」なのだ。 百年先のはるか彼方を望んでは、また自らの足元を見つめ直す。 土台をしっかりと固めては、またみんなと遠い未来に思いを馳せて語り合う。