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コラム

百年構想のある風景

2015/1/12 10:00

完売

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村上春樹氏の新刊『1Q84』は、先行販売で“売れる、売れる”というニュースが相乗効果を招き、人気作家の久々の作品ということもあって、またたく間に売り上げを伸ばしている。これが、ブンデスリーガの試合結果を伝えるドイツの新聞記事に、ちょっとした表現があったことを思い出すきっかけとなった。 試合内容を伝える上で必須項目の一つは入場者数、その数字のあとに(Ausverkauft)とよく書かれていた。このドイツ語は、“売り切れ”、“満員”を意味し、英語では “sold out” にあたる言葉である。これが、同リーグの1試合当たり平均入場者数世界一と何か関係があるかもしれない。大相撲でも席が一杯になると、国技館の土俵四方の天井から「満員御礼」の垂れ幕が下がり、力士や関係者に大入り袋が配られる。

いずれも、チケットが完売したことを知らせるものである。 2008シーズン、J1で完売したリーグ戦の試合が12クラブ40試合あったことは、意外に知られていない。そのうち4割は人気の浦和レッズに絡むものだったが、収容人数2万人前後のコンパクトなホームスタジアムをもつ柏、大宮、千葉、川崎でも、5試合以上の満員を記録している。J2では、鳥栖の一試合だけ。むしろ特筆すべきは、その鳥栖(21,029人)と徳島(11,897人)が、1試合当たりの最多記録を更新したことにある。 昨年Jリーグの視察チームが、米国のスポーツ文化やスポーツビジネスを学ぶために、オハイオ州の人口16万人の町デイトンを本拠地とする、野球マイナーリーグ(1A)のデイトン・ドラゴンズを訪問した。藤村昇司元マネージャーは、「チケットのセールス(販売)こそが経営を左右する」という当たり前の哲学と、チケットの種類やデザインに趣向を凝らし、少しでもその価値を高めようと努力する姿が、特に印象に残ったという。 収容人数7,230人の Fifth Third Field スタジアムでは、85%の座席がシーズンチケットで占められる人気ぶりで、訪問時も944試合連続で完売の記録を続けていた。

そもそも「入場者数」とは、招待券などによって動員された観客数をさすものではない。クラブのスタッフ一人ひとりが、常連の顧客にあるいは新しいファンに、アイデアをめぐらし根気強くセールス活動をしたチケット一枚一枚の総和であり、とても尊い数字である。 紙面の入場者数のあとに(満員)や(最多)の二文字が加わると、たとえばスタジアムを埋めた満員の観客16,833人の価値が、収容人数4万の大スタジアムに入った2万人に負けず、輝いて見えてくる。そこに表示されたちょっとした情報に、「それなら、自分も一度スタジアムへ行ってみようか!」と、大いに食指を動かされるだろう。