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コラム

百年構想のある風景

2015/1/12 10:00

スポーツファミリー

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1987年米国出張の際、オハイオ州コロンバスの郊外を通ったとき、あたり一面に広がる芝生のピッチで子供たちがボールを追う光景に目を見張ったことがある。2001年、国際サッカー連盟(FIFA)が各国協会に行った調査をもとに発表したサッカー競技人口の世界一は、意外にもその米国であった(約1870万人、うち女子600万人)。 日本は、ドイツに次いで10位の350万人だったが、実際の日本サッカー協会(JFA)の公式登録者数(2008)は約90万人である。“サッカー人口”と言っても、多くは、公園や空き地で気軽に球蹴りを楽しむ「活動人口」から、同好会チームなどのすべてのプレーヤーを含む「競技人口」、少なくは、JFA公式大会に出場可能な選手を示す「登録人口」まで、とらえ方によりさまざまだ。

ドイツの場合、「登録人口」の統計は、「競技人口」の数にほぼ一致する。というのは、地域のスポーツクラブに登録された各種目の会員データが、スポーツ団体を統括する『ドイツスポーツ連盟(DSB)』(2006DOSBに改組)のもとに、その団体を経由して同時に集計されるシステムになっているから。 男女別・7世代の年齢別・地域別などに分かれた55種目の詳細なデータが、DSBから毎年発表される。05年の登録人数は約2722万人、国民3人に1人の割合だ。最多はサッカーの約630万人、次に体操500万人、テニス170万人と続く。たとえばラグビー(8,834人)など、あまり人気のない種目であっても漏れはない。 日本では、各競技団体別に公式大会出場のための「登録人口」が中心で、中には正確に把握できていない団体もあるという。

DSBに相当する(財)日本体育協会の現状の仕組みでは、“スポーツ人口”について、ドイツ同様に実質的な競技人口を網羅することはむずかしい。このため、体力・スポーツに関する世論調査やレジャー白書では、独自のサンプリング行動調査による推定値をもって「活動人口」としている。 Jリーグはクラブの理想像を、欧州に見る地域の総合型スポーツクラブのあり方に求めてきた。サッカーのクラブを核に、誰もがいろいろなスポーツを楽しめる環境づくりは、百年構想の大きな柱。“スポーツ人口”を正確に把握することは、そのための第一歩である。 いま生涯スポーツの時代に、体育の直系に通じるグループを登録対象とするのみではなく、老若男女みながスポーツを介して人生を謳歌できるステージをつくるために、我が国の登録システムのあり方から考え直さねばならない。そこには、地域のクラブを活動の中心とした『スポーツファミリー』の広いすそ野が浮かびあがってくる。