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コラム

百年構想のある風景

2015/1/12 10:00

アウェイゲーム

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サッカーの試合に勝つには、心理的要因がとても重要になる。その証拠が「アウェイゴール・ルール」の存在だ。1969年、欧州カップ戦で初めて採用され世界に広まった。ホームとアウェイ2試合合計スコアが同じ場合、アウェイでの得点の多い方を勝ちとする。 敵地で行う試合の不利は、いくつかの要因から勝率や得点能力の著しい減退となって現れてきた。長距離移動、慣れない食事やベッドによる疲れ。家族と一緒のくつろいだ我が家から出陣できない環境。ピッチの内外に感じる強い敵意、それは、スタジアムに近づくと受ける相手サポーターからの威嚇、ビジターチーム用ロッカールームの違和感、不慣れなピッチ環境や極端に対照的な応援光景など。 一例は、インターコンチネンタルカップが東京開催(1980~トヨタカップ)となった経緯である。

1960年に始まった、欧州クラブチャンピオンと南米チャンピオンのホーム&アウェイの戦いは、年々勝利に固執した応援がエスカレートし、特に欧州チームに対するスタジアム内外での妨害行為から、欧州トップクラブからは敬遠される大会となった。 70年代の10年間でまともに開催されたのは、3回(70、72、76)のみ。残りは、2回(バイエルン・リバプール)の中止、5回(アヤックス2・バイエルン・リバプール・ノッティンガム)は欧州2位チームが代理出場した。このため、第三国での一発勝負地として東京が選ばれたのである。 ホームでの勝利数合計をアウェイでの勝利数合計で割った、アウェイの不利を表す比率を欧州41リーグ(1992-93)で算出したことがある。平均値は2.1倍、ホームで勝つ可能性がアウェイに比べ2倍高いことを示す。最高は、ルーマニア(4.9)の約5倍。以下、アルバニア(4.8)、ユーゴ(4.5)、ウクライナ(3.7)、クロアチア(3.5)とバルカン半島と周辺が高い。主要国では、イタリア(2.6)、フランス(2.4)、ドイツ(2.4)、スペイン(2.1)、イングランド(1.8)、オランダ(1.3)。クラブ格差も大きく、ブンデスリーガ40年間の平均値は2.2倍、最高はB・ミュンヘン(6.9)の約7倍、カイザースラウテルン(4.2)、ブレーメン(4.2)の順。 Jリーグでは1.4倍(J1,2008)、1999~2008シーズンの累計をみても1.3倍と、アウェイゲームが欧州ほど大きな不利となる数字はあまりみられない。クラブ別では、甲府(2.8)、仙台(2.2)、新潟(1.8)など地方クラブでホームの利が際立っている。

倍率の高さは、ホームゲームの大多数を埋めるサポーターの前で勝利することを示す“熱狂指数”と言えるが、他方、低い倍率は、チームのアウェイでの精神力の強さを指しているともとれる。 たとえば、広大アジアでのアウェイゲームを克服することは、アジアチャンピオンズリーグ制覇をねらうJクラブには、常に試される大きな課題である。