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コラム

百年構想のある風景

2015/1/12 10:00

白銀は招く

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いよいよバンクーバー冬季オリンピックの開幕が近づいてきた。4年前のトリノでは、アルペンスキー男子回転で、アルビレックス新潟に所属した皆川賢太郎選手が堂々の4位入賞を果たし、日本中を驚かせたことは記憶に新しい。 ウィンタースポーツには、スピードスケート、フィギュアスケート、カーリングのような氷上競技と、スキー、スノーボード、バイアスロンといった雪上競技がある。氷上種目は、観客を意識したアリーナと呼ばれる立派な屋内施設で行われ街中に立地する。競技に適した自然条件を最優先する雪上種目の会場は、都会から離れた中山間地に設けられる。 11年前、ドイツでワールドカップ・スキージャンプ・ツアーに参戦した日の丸飛行隊の応援に出かけた。このワールドカップは、ウィンタースポーツの最大の祭典。

今シーズンは、昨年11月下旬から本年3月中旬まで、世界8カ国18都市で開催され、2月初旬は、決まってドイツ中西部のWillingenヴィリンゲン。人口わずか6,500人の村はアクセスも良くなく、国際ジャンプ競技がなければ、その名が世界に知られることはない。 最終日のミューレンコプフ・ジャンプ台の周りは、開始1時間前からすでに黒山の人だかり、裕に1万人はいた。予め購入した指定席券には、一人50DM(4,000円)でソーセージをはさんだパンと飲み物がつく。駐車場から観覧席までは1時間半の雪道をもくもくと歩かねばならないから、暖かい飲み物の有難みが増すというもの。氷点下ながら、みんなGlühwein(ホットワイン)を飲み、ジャンプを見ながら大きな歓声をあげ最後まで楽しんで帰って行く。個人戦では、葛西選手が優勝、船木選手が3位に入り、長い道のりも厳しい寒さも吹き飛んだ。

このように、欧州の人たちは、どんなスポーツ観戦でも、飲んで食べてコミュニケーションをとって楽しんでいる。4カ月にわたるツアーは、札幌(人口189万人)とオスロ(58万人)を除けば、ほとんどのジャンプ台が人口のそう多くない田舎町にあり、どの会場もWillingen同様に大勢の観客が集まって来る。一方で、3年前にノルディックの世界選手権が開催された札幌市内にある大倉山シャンテのジャンプ台に集まったのは、僅か5千人足らずという情けない話がある。そこには、1972年の冬季オリンピック70m級ジャンプで、日本が表彰台を独占した往時の盛り上がりはない。 ようやくわが国でも競技によっては、現地に足を運びスポーツを心から楽しむことが文化として根づいてきた。Willingenの観覧席は大改修され、さらに多くの観客を集めている。今年の札幌大会(1月15~17日)は、オリンピックイヤーの賑わいを取り戻すだろうか。