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コラム

百年構想のある風景

2015/1/30 10:00

街中ボールパーク

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東北楽天ゴールデンイーグルスのシニア・アドバイザー、マーティ・キーナート氏が興味深いテレビ番組を教えてくれた。「アメリカボールパーク物語」(1999年制作)だ。そこには、欧州のサッカースタジアムと同時代に、紆余曲折しながら同じ方向に向かう野球場の姿があった。 19世紀初めに生まれた野球は、1860年代にはプロ化して木造のボールパークが誕生した。場所は、街中の空き地である。20世紀になると、火災や崩落など安全上から新しい建築技術の鉄骨やコンクリート製に建て替えられ、有名な♪私を野球に連れてって♪の歌が作られた翌1909年、初めてフィラデルフィアに近代的な二階建てのシャイブパークが登場した。 老朽化が目立ち始めた1950~70年代、球団や自治体は様々なスポーツやイベントにも対応できる多目的スタジアムを求めて、街中を去り郊外へ出て行った。

車社会を反映した大駐車場が周囲を取り囲む。左右対称の全天候型ドームには、天然芝ではなく人工芝が張られる。コンピュータ制御による巨大スクリーンは、スタジアムをアミューズメントパークに変身させた。チームの個性や親近感が失われ、野球ファンから「コンクリート・ドーナツ」と揶揄された多目的スタジアムがアメリカ全土に広がった。 観客動員力のあるアメリカンフットボールとの兼用は、観客席が内野から遠く試合の臨場感が薄れて野球ファンの意に背く。単一化されたスタジアム内から、どこでプレーしているのか困惑すると選手にも不評だった。その中、アストロドーム(トロント)に登場した「スカイボックス」(特別観覧ラウンジ)は未来へ一筋の光明だったといえよう。89年に完成した開閉式屋根のスカイドーム(トロント)にも、もはや野球への親近感を取り戻す力はなく、オーナーたちは抜本的な変革の必要性に迫られる。 それは、野球場の『街中回帰』だ。90年代に入り、中央駅近くに新設されたカムデンヤーズ(ボルチモア)を機に、繁華街に隣接したクアーズフィールド(デンバー)、ウォーターフロントに面してフェリー桟橋と一体化したサンフランシスコのパシフィックベルパーク(現AT&Tパーク)など、街中のボールパークは建物そのものが一つの街になった。 ボールパークは、球団百年の歴史と伝統の面影を随所に残しながら、まちの個性に合ったデザイン、最新で快適な観戦環境と野球のためだけに設計された天然芝の専用スタジアム。

ファンは、試合の迫力をどの角度からでも体感できる。 番組の中で『ボールパークの変遷』の著者マイケル・ガーシュマン氏はこう語っている。「ボールパークには思い入れがある。野球は、文化だから。昔は、生活あってのスポーツ、今は、スポーツは生活の一部である。大リーガーたちは、いつも会うことのできる大切な家族の一員。彼らの住まいが、(街中の)ボールパークなのだ。」 アメリカ人のより良きものに気づく力と実行力には、見習うべき人間のパワーがある。 いずこも、スタジアムは、町や暮す人々の過去から未来をつなぐ大切な場所なのだから。