
レイラック滋賀FCと平和堂HATOスタジアムの歴史は、「天皇杯から始まった」と言っても過言ではない。
2023年、『MIOびわこ滋賀』から改称したばかりのレイラック滋賀FCは、開場からわずか1カ月の平和堂HATOスタジアムで天皇杯1回戦を戦った。相手は当時J3のアスルクラロ沼津。当時JFL所属の滋賀にとってはジャイアントキリングを狙う一戦だった。
サッカーにおいてはこの試合が同スタジアムのこけら落としであり、レイラック滋賀FCにとっても初の彦根開催。当時は会場の周辺にまだ茶色い土が広がっており、施設整備も道半ばだった。
試合は58分に先制を許したものの、75分に俣野 亜以己のゴールで同点に。そして1-1で迎えた延長後半アディショナルタイムに平尾 壮が勝ち越しゴールを決めて2-1とし、滋賀が劇的な金星をつかんだ。
それから約2年半後、滋賀はJ3・JFL入れ替え戦で再びアスルクラロ沼津を破り、悲願のJリーグ参入を果たした。ハトスタは正式なホーム(天皇杯では中立地扱い)となり、駐車場やトイレが整備された。砂利に囲まれていた白い大階段の周囲も整備され、今では多くのサポーターを迎える玄関口になっている。
そして今回の天皇杯1回戦で、滋賀は3年前とは逆の立場に立つ。当時は「追う者」だったが、今回はJクラブとして「追われる者」。平常心を保って試合をコントロールできるかが問われる。
その難しさを知る1人が海口 彦太だ。3年前のアスルクラロ沼津戦にも出場し、直近のシーズンまで主将を務めた29歳のボランチ。J参入に失敗すれば引退も考えていたという状況の中で、チームをJ3昇格へ導いた。一昨年度、昨年度と県予選敗退も経験しており、天皇杯特有の怖さも身をもって知っている。副将となった今季、この一戦には彼の歩んできた時間が色濃く映るはずだ。

海口彦太は天皇杯での喜びも難しさも経験してきた(写真は2026/27J3第1節・岐阜戦)
対する新潟県代表のJAPANサッカーカレッジは、専門学校を母体としながら学生のみで構成されるチームではない。職員として競技に集中している選手も多く、北信越フットリーグ1部では強豪として安定した力を発揮している。2024年度大会において、豊田スタジアムでJ1の名古屋を1-0で破る大番狂わせを演じたことが記憶に新しい。
その試合を知る選手も数多く残る。中でも在籍11年目の安藤 裕麻は、守備を支える最古参だ。自身も2023年に引退を考えながら慰留を受けて現役を続けたという経歴を持ち、海口 彦太とは逆に、今季は主将を任されることになった。その豊かな経験を武器に、再びの番狂わせを狙う。
かつて「追う者」として歴史を動かした滋賀。今回は「追われる者」として彦根開催の天皇杯に臨む。3年間で積み上げたものを滋賀が示すのか。それとも、またこの場所で新たなジャイアントキリングが生まれるのか。ハトスタの次の歴史が、ここから始まる。
[ 文:籠 信明 ]