ストーリーstory

イベントレポート この想いを形へ。Jリーグをつかうことで生まれるインパクトとは 〜第1回 シャレン!キャンプ イベントレポート〜 [2019.08.28]

第1回 シャレン!キャンプの様子はこちら

集まった仲間で“スタート”する日

2019年8月28日。等々力陸上競技場に集まったのは、Jリーグ・チーム・企業・市民の50名の方々。Jリーグが取り組んでいる「社会連携活動」、通称「シャレン!」のイベントに参加するためだ。シャレン!とは、社会課題や共通のテーマに、地域の人・企業/団体・自治体・学校等とJリーグ・Jクラブが連携して、取り組む活動のこと。その取り組みの中でも、かなり肝の部分である、第一回目となる「シャレン!キャンプ」を実施した。

「シャレン!キャンプ」とは、Web上で応募したアイデアを実現するために、内容をあらゆる角度から見て深めるための場。応募があった30を超えるアイデアの中から、今回は6つのアイデアが選考された。この場の特徴は、冒頭にも話したように様々なセクターの人が集まり、多角的に企画を見ることができる点だ。異なった角度から見ることで、より現実的にインパクトを起こすことができる企画になっていく。

冒頭には、川崎フロンターレのクラブスタッフから、「社会連携は社会貢献とは違います。今日の場で仲間をつくっていただいて、連携して地域課題を解決していきましょう。今日で完成するのではなく、今日集まった仲間で“スタート”する日なのです」と力強いコメントが送られた。ちなみに、川崎フロンターレは実際に「シャレン!」に取り組んでおり、発達障がいを抱えた子どもたちに対して、サッカーを「見る」「する」ツアーを実施している。

多種多様な6つのアイデア

では、ここで厳選された6つのアイデアについて見ていきたい。

  1. ①ゴクゴク飲んで地域とJリーグを応援しよう!
    〜tabeloopスタンド〜

    発案者はtabeloopという、食品ロス・産地ロスを削減するためのECプラットフォームを運営している。今回、Jリーグのチームの応援と地域の応援を組み合わせることで、サッカーに関心を持つ人、産地のものを食べたい人、健康に関心を持つ人など、多くのひとにサッカーと産地ロスについて知ってもらえる機会となると確信したことから、応募に至ったとのこと。企画の内容としては「産地ロス品を使った商品をJチームと生産者が一緒にドリンクを開発をする」というもので、ホームゲーム時にそのドリンクを販売。今流行っている、タピオカドリンクに代わるドリンクになることを目指していく。産地ロスの要因の一つである「人手不足」にも対応すべく、農地ボランティアを巻き込み、そこにチームの応援も掛け合わせていく仕組みもつくっていく。

  2. ②マイタウンプライド醸成Project!!

    この企画の発案者は以前、Jクラブで勤めた経験もあり、現在ではスポーツジムを運営している。地域の方が健康であることで幸せな生活をおくり、地元のJクラブを身近に感じ、応援することで生きがいを感じてもらいたい。そして、ご自身の町のプライドを醸成し、地域になくてはならないクラブ創りをお手伝いしたい。と熱い思いを語る。提案するのは、「場創り」×「人創り」で「まち創り」をコンセプトに掲げ、遊休施設の利活用とコミュニティの再生を活用した、地域貢献プロジェクトだ。166箇所にスポーツクラブを運営しているルネサンスと、Jクラブが一緒になって「多世代が交流できるスポーツコミュニティ拠点」をつくる。地域の方が持つ課題を、未来の期待へと変えていきたいと意気込む。

  3. ③シルバー世代が支えるJリーグ
    〜コミュニティ創生による孤立化阻止

    帝京大学でスポーツマネジメントを学んでいる発案者は、自身の祖父が、定年後に孤立して元気を失っていく様を目の当たりにし、シルバー世代へのアプローチを考えたそうだ。Jリーグの試合を通じて、高齢者のコミュニティをつくるプロジェクトを提案する。自治体とJリーグが連携することで、地域に貢献している店舗からシルバー世代へアプローチし、Jリーグのホームゲームのボランティアを通じてコミュニティを形成していく。さらに、そのコミュニティを自治体で活用することも目指していくというものだ。

  4. ④“スポーツで災害に強くなる” 防災スポーツ

    発案者は現在、スポーツビジネスを展開し、自らも阪神・淡路大震災を被災し、「防災の知識」に加え、行動できる「体力」「スピード」の重要性を体感。これらはスポーツで育めるはずだ!と気付き、発案したのが「防災スポーツ®」だ。「災害の多いこの日本で、もし、Jリーグ・クラブ・選手からそういった活動を訴求することが出来れば、地域の防災力が高まり、もしもの時の減災につなげられる」と話す。具体的には、「防災技術と体力を競う、防災スポーツ競技大会―防リーグ®―」、「防災に関する正しい知識と行動を学べる学習プログラム―防トレ―」に取り組む。それらをJリーグとともに展開していく。

  5. ⑤町工場Meets Jリーグ

    中小企業診断士として、地域の中小企業の経営支援を仕事としている発案者。「地方の中小企業の多くは人手不足が深刻化している。若者の雇用の場がないのではなく、見えていない。もしくは若者が望むような仕事内容や労働環境ではない、というアンマッチな状況。地域の中小企業がJクラブと連携することで魅力を高め、街をもっと元気にしたい!」と話す。そんな課題を解決するために「スポーツ×αで街を元気にしたい!」をキーワードに、中小企業と地域の若者の人材マッチングなど様々な企画に取り組んでいく。Jリーグというブランド力や集客力といったリソースを活用し、今まで接点が少なかった地元中小企業とJクラブがつながることで相乗効果を生んでいくという狙いだ。うまくいけば、アスリートのセカンドキャリア問題にも貢献できる施策である。

  6. ⑥さがみはらスポチャレ!

    青山学院大学スポーツキャリアプログラム講座に参加する学生4人で構成されたチーム(当日は講師の方が参加)が発案した企画。大学スポーツやアスリートのセカンドキャリアへの関心が高く、大学にオリンピック選手団が来ていることから、当プロジェクトを発案した。相模原の子どもに着目し、「相模原の子どもたちの心を育む」ことをビジョンとしたイベントを、相模原を拠点に活動するプロスポーツ団体と共に取り組むという内容だ。相模原市、チーム、大学で連携し、地域を盛り上げていくことを狙っていく。目指すは、総合型スポーツクラブではなく、「統合型のスポーツコミュニティ」の形成だと話す。

強い熱量で
未来を一緒につくっていく

それぞれのプロジェクトのプレゼン終了後は、大きく2つのセッションを経ていくことになる。まずは、「ポスターセッション」と呼ばれるもの。チーム・企業の方々が、それぞれのブースへ詳しい話を聞き、企画内容を深める対話を行なっていく。いくつかの過程を経て、参加者は自分がコミットしたい企画を選んでいく。そこに集まったメンバーが今回のアイデアを実行するチームというわけである。無事、チームが決まると、「チーム対話」と呼ばれる手法で、アイデアを実施するにあたって必要な要素を集め、具体的なアクションを練っていく。どのチームも、起案者が中心となり、熱い議論が交わされていた。どうすれば、より良いアイデアになるのか?このアイデアにはどんな可能性があるのか?そして、どうすれば実現することができるのか?先を見据えた、実りのある時間を過ごしていた。

最後には、シャレン!の起案者である米田惠美理事からこんな言葉が送られた。「私は、応募があったすべてのアイデアに目を通しました。それを見て、『世の中ってこんなに優しいのか』と感動したんです。そして、今日感じたのは強い熱量。ここから、また新しい仲間を集いつつ、新しい未来を一緒につくっていければと思います。本日はありがとうございました。」その目からは涙が浮かび、シャレン!にかける想いの強さをひしひしと感じ取れた。

間違いなく、この場からJリーグを使った素晴らしい企画が生まれるだろうと、確信できる1日となった。結果として、大きく形が変わったアイデアもあったようだが、それこそ仲間が集ったひとつの価値。イベント会場にいたすべての人の顔からは、この先に何が生まれるのか?その期待が表れた笑みがこぼれていた。

ストーリー一覧へ戻る