地震の影響で約１カ月リーグ戦の舞台から離れていたＪ２熊本にとって、復帰２戦目となった５月22日の水戸戦は特別な試合だった。本拠地が使用できないため、遠く離れた千葉県の日立柏サッカー場でのホームゲーム。縁もゆかりもない土地に一体どのくらいのファン、サポーターが集まるのだろうという若干の不安を抱いたが、私の心配は杞憂に終わった。

　会場には地元の柏だけでなく、全国各地からサポーターが集結した。彼らが道に迷うことのないよう、柏のサポーターが中心となってスタジアムまでの要所要所で道案内をしたという。色とりどりのユニホームを身にまとった者たちは赤いポンチョを羽織り、ロアッソのコールに声を上げた。

　芸能界からはスピードワゴンの小沢一敬さんが音頭取り、数多くの芸人たちが募金を呼びかけた。漫画家の高橋陽一さんとツジトモさんは、チャリティー目的で長時間イラスト描き続けた。水前寺清子さんの「３６５歩のマーチ」の熱唱には勇気づけられた。

　Ｊリーグは東日本大震災に続き、熊本地震でも「チカラをひとつに　ＴＥＡＭ　ＡＳ　ＯＮＥ」の名のもと、各クラブと復興支援活動に取り組んでいる。この日はまさにＪリーグを愛するファン、サポーターのチカラがひとつに結集された。

　試合は０―１で熊本が敗れたが、巻誠一郎選手の言葉にチームの思いが込められていた。「現実は非常に厳しい。ただ、何度敗れようとも何度でもチャレンジして熊本に勝利を持ち帰りたい。復興と同じで、諦めたらそこで終わりだと思っていますので」。この気持ちがある限り、選手たちは前を向いて困難に立ち向かっていくことだろう。