チェアマンに就任してから、さまざまな自然災害と向き合ってきた。災害対応は真っ先に現地に入ることが重要で、熊本地震の発生後はＪリーグの原博実副チェアマンとスタッフを派遣した。２人には行動するときの判断基準を持たせた。優先順位の１番目は地域の方々の安全。２番目に選手やその家族、３番目にクラブ、４番目にサッカー界、そして５番目くらいにＪリーグのことを考えればいいと伝えた。原さんが現地でＪ２熊本の巻誠一郎選手と会って、急きょ避難所でフットサルをすることになった。「こんなときに遊んでいたら不謹慎ではないか」と迷ってしまう可能性もあったが、子どもたちの笑顔が見られるのならと思い、プレーすることを選んだ。そういうことは現場でしか判断できない。
　

　熊本では、Ｊリーグの試合会場が物資の供給基地となった。もしスタジアムが街中にあり、かつ屋根付きであれば最高の防災拠点となり得る。大阪にできた市立吹田スタジアムは雨でもぬれないコンコース部分が広く、防災用の毛布や非常食も備蓄している。試合時にハーフタイムの１５分で４万人がトイレに行けるように設計してあるので、避難所としての機能性は極めて高い。スタジアム建設を通じてこういう安全な拠点を全国に増やすことが、私の大事なミッションであるとあらためて感じた。熊本は大変厳しい状況が続き、今後もさまざまな困難があるだろう。私には推し量ることのできない、いろいろな思いが選手にはあるだろう。競技周辺のところは全力でサポートするが、再び立ち上がって戦おうという意志がある以上、試合については対戦する両クラブとも全力でぶつかってほしい。