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コラム

百年構想のある風景

2015/1/12 10:00

ご当地ナンバー

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自動車の「富士山」ナンバーが、山梨・静岡両県をまたがる5市4町4村で11月より交付される。「ご当地ナンバー」として選定されたのは、仙台・会津・那須・つくば・柏・高崎・川越・成田・諏訪・富士山・伊豆・金沢・岡崎・豊田・一宮・鈴鹿・堺・倉敷・下関の19地域で、Jのホームタウンも含まれている。対象となる約400万台が地域の広告塔として全国を走り、1,000万人の住民の地域意識に変化を与えた。 「ご当地ナンバー」制度を提唱したきっかけは、今から10年前に人口60万人の都市フランクフルトで生活を始めたときのこと。自動車のナンバープレートに記された地域名の多さに興味を抱き日本の地域数を調べてみると、運輸支局の数に相当する僅か87で人口150万人に1つ、このうち1県に1つしかないのは27府県もあった。

ナンバーの登録管理業務を地元自治体に任されているドイツでは、435もあり人口20万人に1つ、10万人未満の小規模地域に約7割の300もある。小さい都市でも視覚的に存在感を示すことができる。クラブ名に必ずホームタウンの市町村名を入れることで、「おらがまち」として市民に自信や誇りをもたらすJリーグ。人口17万人のまちにあるジュビロ磐田の存在も地域に一体感を与える点で磐田ナンバーと同じだろう。 日本の漢字表記に比べスペースの事情から大都市がアルファベット一文字、中・小都市で3文字までと制約があっても、近隣の町のものはどれも正確に地域名を言い当てるほど、地名はドイツ人にとって関心深い大切なアイデンティティの一部だ。 フランクフルト人は、永遠のライバル:Offenbach Kickersのホームタウンのナンバー“ OF ”の車を見つけると、「Ohne Fhrerschein」(無免許)と言ってオッフェンバッハ人の運転をからかう。

試合当日、ひいきのクラブのマフラーを運転席の窓から棚引かせた車やチームカラーにデザインした車を見かけると思わずナンバーの地名を確認した。 ドイツ車の広告宣伝には、地域企業の当然として本社所在地名のナンバープレートが用いられることが多い。ダイムラーはシュツットガルトの“S”、BMW はミュンヘンの“M”、アウディはインゴルシュタットの“IN”、VWはヴォルフスブルクの“WOB”のように。 地名は、地元の住民や企業に誇りと愛着をもたらす不思議な魔力をもっている。