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コラム

百年構想のある風景

2015/1/12 10:00

ホームタウンの色

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2005年春、さいたま市は区ごとに基本カラーを設けてまちづくりに活用しようと、10の区に住む小・中学生に“色”とその理由を募集。将来を担う若者が、自分たちの暮らす“まちの色”を選び、市民投票により決まった。 浦和区は、浦和レッズの“赤”、大宮区は、大宮アルディージャの“オレンジ”。クラブカラーが、まちのデザインに使われることになった。 欧州には“まちの色”があり、市の紋章(市章)の色に由来することが多い。第5話「エンブレムは市民の誇り」でも触れたように、市章の色は、クラブのエンブレムやユニフォームのデザイン(色や柄)と深く関係する。

また地域企業の証として、市章の大きな旗がホテルや会社の玄関先のポールにいつも掲げられている。 トラム(路面電車)が走るまちでは車体の色に用いられ、眺めているだけで町全体が不思議と明るくなる。知らず知らずのうちに、まちの色に溶け込んで楽しい気持ちにさせられる。 FIFA(世界サッカー連盟)の本部のあるチューリッヒ(スイス)は、世界で最も市民にトラムが愛されているまちだ。100万人の都市圏人口があり、年間利用者数は約3億人。まちの色:青と白のツートンカラーに塗られた、全部で約350のトラム車両やたくさんのバスが、チューリッヒのアイデンティティをあたりの美しい風景に載せて走る。1886年創立のグラスホッパー・チューリッヒのユニフォームカラーも当然に青と白。 かつてのライバル都市は、浦和カラーと大宮カラーに分かれ、まちのデザインを競い合う。

まずは、市を南北に走るJR京浜東北線の駅前商店街からか。北浦和駅・浦和駅・南浦和駅周辺は赤い旗を、大宮駅・さいたま新都心駅周辺はオレンジ色の旗を目にするようになった。 JR九州の新幹線“つばめ”や岡山のトラム“MOMO”などを手がけた総合デザイナー:水戸岡鋭治氏は語る。「デザインとは公共のためにある、子供を育てることと同じです」。 ユニフォームで敵味方が識別できるように、色彩はまちを際立たせる。クラブカラー一色に染まったホームスタジアムから選手が心理的優位を受けるように、“ホームタウンの色”は、市民にとっていつまでも変わらないもの-心の中にある「まちを愛する誇り」-を膨らませていく。