本文へ移動

今日の試合速報

コラム

百年構想のある風景

2015/1/12 10:00

村民の、村民による、村民のためのクラブ

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

清音(きよね)村(岡山県)の人々に出会ったのは、1999年の秋フライブルク(独)の街中にある居酒屋。彼らは、環境先進国に学ぼうと4年前から毎年交替で自主的に当地を視察に訪れていた。異国でのご縁が、“おらが村のクラブ”づくりを応援することになった。 面積10km²、人口は5,700人。明治22年に6村合併で誕生して以来120年間続いた村に、2005年春、総社市との合併により清音村という村名と別れを告げる時がきた。村はなくなっても、清音の響きを消してはならないとの想いを支えたのは、村内で唯一の学校:清音小学校の同窓の絆がつなぐ「きよねスポーツくらぶ」(KSC)の力だった。

戦後一貫して展開してきた「村民皆スポーツ」運動が、02年総合型地域スポーツクラブの創設につながる。会員数は約千人に増え、40超の種目が70人以上の指導者バンクの下で提供される。自分に合ったスポーツに出会える、村民のためのクラブである。 妊婦向けの健康体操、3歳児以下の親子体操、大学との連携による4歳から小学3年生向けのスポーツが楽しくなる遊び、45歳以上には体力保持のための講座、さらに高齢者転倒予防運動、太極拳、卓球などなど。フランスの公園でよく見かけるペタンク競技の日本代表の佐野裕二さんはKSCに所属し、清音は世界とつながる村になった。 8年前、高梁川の河川敷にみんなで芝生張りを始め、3年がかりで3ヘクタールの立派な手作りのグラウンドができあがった。地域リーグ時代のファジアーノ岡山は、少年サッカー教室の後、この芝生を借りて練習をしていた。05年に大洪水で土砂に埋もれた際、すぐに老若男女のボランティア500人が集まり再生した地域力は、村民によるクラブの証である。

コミュニケーションの場が、小学校に隣接した八角形の建物「きよね夢てらす」である。totoクラブハウス助成事業第一号として建設され、外構部分は村民の手で仕上げた。1階吹き抜けのホールは、古代ローマ時代のコロッセウムを思わせる空間で、講演会やコンサートにも使用され、周囲の部屋をすべて見渡せる。正月5日間を除き一年中、朝9時から夜9時まで利用できるのは、管理費用の負担や管理業務を時間交替制で担ってくれる多数のマネジメント会員の存在が大きい。村民の、文字通りクラブハウスとして運営されている。 クラブのGMで夢てらすの理事長である江口仁志氏は、持ち前のリーダーシップをのぞかせ力強く語った。「たとえ合併しても、行政とわれわれ村民が自ら為すべき役割をもう一度見直して、村民皆スポーツで心と体の豊かなむらづくりを続けていきたい。」 スポーツは、地域の小さな巨人たちに、今日も前進する夢と勇気と元気を与えてくれる。