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コラム

百年構想のある風景

2015/1/12 10:00

一本の線があれば

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勝点数、得失点差、総得点数の順で、Jリーグの最終順位は決定する。今年は、終盤を迎えて上位も下位も大混戦、1節ごとにめまぐるしく順位は変わる。 関心の的は、優勝争いだけではない。地元チームやひいきのチームが、「ひょっとするとJ1に昇格できるかもしれない」とワクワクしながら、「もしかしたらJ2に降格するのではないか」とビクビクしながら、もう一度順位表に目をやる。 Jリーグは、3つの構造をもっている。まず、クラブが地域に密着している構造。次に、リーグ全体で発展していく構造。つまり、33-1=0。一つ一つのクラブが、大切なJブランドを背負っている。そして、地域から世界につながる構造である。これまで日本のプロスポーツ界では、リーグの勝者がアジアや世界のステージと直結することや、下部リーグと自動的に昇格や降格するシステムになじみが薄かった。

順位表への興味は、いまや優勝や昇格・降格の話題だけにはとどまらない。アジア・チャンピオンズ・リーグ(ACL)の大会形式が来シーズンから一新。日本の出場枠が、2から4に拡大するからだ。今シーズンのリーグ戦の上位3クラブは、自動的に出場権を得る。天皇杯優勝と重なる場合には、さらに4位にも出場権が与えられる。かように、各クラブが目指すゾーンは、試合が進むにつれ順位表の中で異なってくる。 3位と4位の間に一本の線があれば、ACL出場への大きな夢は身近なものに感じられるだろう。サッカーに詳しくない人も、J1昇格争いにJ2の楽しみ方を知るだろう。15位と16位の間に一本の線があれば、J2降格を逃れようと必死に応援するファンの気持ちが、地元の人々に伝わるだろう。 栃木、富山、岡山、鳥取、北九州、この準加盟クラブのある地元紙に掲載されるJFLの順位表には、4位と5位の間に「J2昇格ライン」と称した一本の線が引かれている。

とにかく線の上に立つことを目指して、今日もファンがホームスタジアムに足を運ぶ。 ただ一本の線を引くだけで、順位表はもっと楽しく見えるだろう。その線の向こうには、それぞれの夢が広がっている。ただ一本の線を引くだけで、順位表がずっと生き生きするだろう。その線を見ていると、最後まであきらめさせない力が自然と湧き出してくる。