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ビール大国ドイツでは、百年以上ビールを醸造し続けているメーカーだけに、“ランド・ブリュワリー”（「地ビール」メーカー）という名前が与えられる。千を超す醸造所と約６千もの銘柄が、全国各地に広がる。フランクフルト滞在時に、行く先々で注文した地ビールに添えられたコースターの多様さに興味を抱き、集めた数は１００枚ほどに。 今夏、札幌に日本一のコレクター：村上淳さんを訪ねてお話を伺う機会があった。昨年サッポロビール（株）を定年退職され、現在はさっぽろテレビ塔を運営する会社の社長である。

同氏が、収集したコースターの数は、なんと３，０００枚にもおよぶ。 世界で泡持ちのある酒は、ビールだけ。コースターの使用目的は、グラスやジョッキから垂れてくる泡や結露水を吸収するため、屋外でふたとして虫やゴミの混入を防ぐため、客が何杯注文したかを店員がメモ書きするため、と多様である。メーカーごと、ビールの銘柄ごとに異なるデザイン（形や絵柄）が施され、楽しませてくれる。コースターは、各州にあるビール博物館の重要な展示物の一つで、地域に密着した食卓文化としても欠かせない。 形は、円形、三角形～八角形、トランプ風、ドーナツ形など。表には、メーカーや銘柄名が描かれている。裏面は、花・さかな・動物・植物などの生物、自然、観光地、人物、車・船・建物、企業の歴史・ポリシー、漫画、など自由度が高く多種多様。通常、毎月あるいは隔月に図柄やテーマを変えていき、もとのデザインに戻るまでのサイクルは６０年。 ドイツに本部を置く「世界ビールコースター蒐集協会」には、数百人の会員が登録され、村上さんは日本人初の会員とか。

同氏が、直接集めたのは千枚、残りの二千枚は年一回行われる大交換会で入手したものだそうだ。 スポーツクラブのレストランで飲めるご当地ビールは、入口に飾られた看板のロゴを見れば一目でわかる。ノンアルコールビールのコースターには、サッカーやテニスなどスポーツの絵柄が入ることも多い。カールスルーエ市（独）では、創立百周年を迎えるスポーツクラブに市からのお祝い金1,000ユーロが贈られる。百年の歴史を刻むコースターに見守られ、“プロスト”（乾杯）の声がクラブハウス内にこだまする。 日本でも、飲料メーカーの地元工場と地元クラブが手をつなぎ、裏面にエンブレムやキャラクターなどオリジナルのデザインを描いたクラブのコースターがあったなら、街中や家庭の食卓もホームチームの話題で楽しく彩られるにちがいない。