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コラム

百年構想のある風景

2015/1/12 10:00

街の名刺

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かつて中心市街地活性化の一方策として、全国の商店街で「地域通貨」が流行した。地域にちなんだユニークな名前がつけられ、地元商店街など特定エリアの資金循環を促し地域活性化を狙ったものだった。 一方、専用端末にかざすだけで支払いができる「電子マネー」のICカードは、現金不要の手軽さから取扱店舗は急増し、利用範囲は瞬く間に街中に広がっている。カードの種類は、運営会社ごとに異なる。利用範囲は全国区のものまであり、敢えてどの種類のカードを選ぶかという動機に決め手は見当たらない。

そこで、両者の機能を合体した魅力的な電子地域通貨は創れないだろうかと考えてみた。 地域意識の強い英国には、イングランド、スコットランド、ウェールズ、北アイルランドと四つのサッカー代表チームが在る。スコットランドには、国家として独立論議すら消えてない。首都グラスゴーの2クラブ:セルティックとレンジャーズは、ハイレベルなプレミアからリーグ加入の誘いを受けるが、誇り高きスコットランド人は決して許さない。 強い地域愛は、エリザベス女王の顔が印刷された紙幣とは別に、三つの銀行から発行されているスコットランド紙幣にも表れている。イングランドと境を接する町グレトナ・グリーンには、「国境の街」という標識すらあった。お釣りに渡された地元紙幣を、イングランドに入る前ここですべて使わねばとあわてたが、ロンドンでも流通していると聞いてさらに驚く。 地域の誰も、そのカードを持ちたくなる動機には、強い求心性と魅力が必要である。「これは、俺たち、私たちの“顔”なんだ」という、市民みんながアイデンティティを確認し合える存在とは何だろうか?

日本経済新聞の名物コラム“フットボールの熱源”の「独立宣言のススメ」にヒントを見つけた。Jクラブの“愛称”を冠し、チームカラーでデザインされたカードはどうだろうか?  鹿島地域ならエンジ色のアントラーズカード、浦和地区であれば赤いレッズカード、新潟市内に来るとオレンジ色のアルビカードという具合に。どれも、機能面は既存の電子マネーに相乗りすれば十分である。すでに、“愛媛FCい~カード”など一部の地域では同類のものがあるようだ。 一枚のカードが、スタジアムを飛び出して市民の日常の中に溶け込み、“街の名刺”となったとき、Jクラブは「地域の顔」になるだろう。