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2024JリーグYBCルヴァンカップ 1stラウンド 3回戦の10試合が22日(水)に開催!
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コラム

百年構想のある風景

2015/1/12 10:00

羅針盤

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2009年度のJクラブの経営情報が開示された。‘99年初めて集計値として公表され、’06年に現在の個別クラブ単位に移行した。数字はJクラブの羅針盤、経営の舵取りが見えてくる。 ブンデスリーガでは、毎年50ページにわたるアニュアルレポート(年次経済報告書)が発表される。その中に登場する「クラスター分析」をみると、経営戦略のはっきりとした棲み分けがわかる。選手や監督に投じた人件費の多い順に、18クラブを上位(~6位)、中位(~12位)、下位(~18位)の三階層に分け、平均値を比較する。2008-09シーズンの全平均は49億円(総収入124)であるが、上位82億円(212)、中位41億円(102)、下位23億円(57)の間に格差構造は明らかである。

上位クラブのチーム強化に対する積極的な姿勢は、5クラブに与えられる欧州チャンピオンズリーグ(3)や欧州リーグ(2)の出場資格と密接に関係する。放映権料や広告収入などの収益機会の大きさは、上位グループの最終利益(税引後)が8.9億円と、リーグ平均の4倍に上ることからもわかる。成績順に3グループに分けても、その構造に変わりはない。予算規模の小さい下位クラブは、育成を主体に残留に照準を合わせた堅実な経営に徹して相応の利益を確保している。一方、中位にとどまったクラブは、投資に見合うだけの収益チャンスに恵まれず結果は伴ってこない。 J1クラブに同様の分析を試みた。人件費区分では、リーグ平均16億円(総収入33)に対し、上位21億円(44)、中位16億円(29)、下位11億円(25)。ブンデスリーガに比べて横並びで小粒感は拭えず、最終利益にも大きな棲み分けはない。まだまだ、その上のアジアチャンピオンズリーグが欧州のように経済的に大きな魅力を有しきれず、Jリーグに、常にアジアNo.1の座を約束する“ビッグクラブ”も見当たらないからだろうか。

思い返せば、世界的スターがピッチ上を駆け回ったJリーグ黎明期のシーンがある意味懐かしい。当時世界一だった現役ブラジル代表が、Jリーグに6人も顔をそろえていたのだから。こんなことを言えば、「言うは易し」とお叱りを受けるかもしれない。羅針盤を頼りに、強さ、人気、収益力のバランスを保っていれば、船は順風満帆に航海を続けることができる。 されど、上には上がある。「上を見る」ことで、選手、クラブ、リーグすべてが世界とより近くなる。ワンランク上のリーグに進化するために、思い切って“突き抜けた経営”に舵を切るクラブを待ち望む。