浦和レッズは2015シーズンの1stステージを無敗で制した。しかし、そのサッカースタイルはミハイロ ペトロヴィッチ監督が浦和の指揮官に就任した2012シーズンから不変だ。
試合開始時のノーマルシステムは3-4-2-1だが、攻撃時はリベロとダブルボランチの一角が最後尾に降り、両ストッパーがサイドに開いてワイドな位置を取る擬似4バックを形成する。また、1トップ、2シャドー、両サイドアタッカーが最前線に張る5トップとなるのも特徴的だ。一方で守備時には本来の3バックと両サイドアタッカーが横並びになる5バックを作り上げて5-2-2-1のような形になる。すなわちペトロヴィッチ監督が志向するのは可変システムで、ピッチに立つ選手たちは試合状況によって柔軟にそのポジションを変えていく。
なかでもチーム全体の舵取り役を担うのがキャプテンでボランチを務める阿部 勇樹だ。彼は戦況を見極めてチームの最後尾に降りたり、果敢に敵陣へ打って出たりしてオーガナイズを図る。また阿部は攻撃起点としても機能し、後方から巧みなビルドアップを実行して敵陣中央への縦パス、サイドへのロングフィードなどを繰り出してアクションを仕掛ける。そして今季は阿部に加えて柏木 陽介がボランチポジションを担い、同様の役割を全うしてチーム戦術を昇華させ、自らもヴァイッド ハリルホジッチ監督率いる日本代表に招集されるようになった。
そして、現在の浦和が結果を残し続ける最大の要因はチーム全体で織り成すアタックにある。前線トライアングルと称される1トップ+2シャドーは興梠 慎三、武藤 雄樹、ズラタン、梅崎 司などが務め、彼らは巧みなパスコンビネーションと個人戦術を融合させて敵陣を攻略する。その破壊力は武藤13点、興梠12点、ズラタン8点、梅崎8点と得点数にも表れており、攻撃の生命線を成していることを示している。
しかし今の浦和は、前線の機能性が削がれても得点を生み出す武器を多数有している。右サイドアタッカーの関根 貴大はプロ2年目にして定位置を獲得し、スピーディでパワフルなドリブル突破から数々の好機を演出し、ゴールをも奪う。また左ストッパー・槙野 智章の果敢なオーバーラップはすでに周知された攻撃手法だろう。DFでありながら相手ゴール前まで突撃する槙野の積極性は出色で、これまでも彼の仕掛けから貴重なゴールが何度も生まれている。ただし今季に限っては、槙野は攻撃よりも守備に注力し、相手エースFWを封殺する役目に注力している。
昨季と今季のチームの相違点を挙げるならば、柏木が果たす役割の重要性だ。昨季までシャドーを請け負った彼が今季ボランチで果たす職務は、チーム戦術を一変させるだけの影響力を与えている。安定したボールキープ、広角な視野を駆使したフィードパス、計算し尽くされたスルーパス、そして自ら侵入して相手ゴールを射抜く脅威の左足シュート。コンダクター・柏木のムービングアクションがチームを高みに引き上げる。ズバリ、浦和の命運を握るのは柏木 陽介。彼のプレーレベルがチームの勝敗を分けるターニングポイントになるだろう。
[文:島崎 英純]