MVP & NEW HERO

過去表彰者

インタビュー
2017.10.13 12:00

2016年ニューヒーロー賞 井手口 陽介選手

井手口陽介の脳裏には、このルヴァンカップについて、大きく分けて2つの記憶が刻まれている。1つは、高校3年生ながら『飛び級』でトップチームに昇格した14年。このルヴァンカップのグループステージ・サガン鳥栖戦で公式戦デビューを飾ったこと。そしてもう1つは、16年にプロとしては初めての個人賞となる『ニューヒーロー賞』を受賞したこと。中でも『ニューヒーロー賞』にはかねてからポジティブな印象を抱いていたことから、受賞の知らせを聞いた時の喜びは格別だった。

「宇佐美くん(貴史/フォルトナ・ドュッセルドルフ)をはじめとする歴代の受賞者の方の多くが、『ニューヒーロー賞』の受賞をステップとして、その後、日本代表にも選ばれていますからね。そこに自分も続きたいと思いながらも、僕の場合はあまり目立たないポジションだということもあり、無理やろうなと思っていたんです。だからこそ、受賞の知らせを聞いた時はすごく嬉しかった。プロになって初めてもらった個人賞でしたしね。いただいた盾はいまでも家に飾ってあります。ただ、喜びと同時に『これからが大事やな』と思ったし、その責任を今後の自分に活かさなければいけないと思った記憶があります」

結果的に、『ニューヒーロー賞』を受賞した16年の浦和レッズとの決勝戦はPK戦の末に敗れたが、初めて立った決勝の舞台とは思えないほど、井手口は攻守に圧巻の存在感を示す。まさに『責任』が伺えるパフォーマンスだった。

「あまり気負いすぎてプレーするといい方向にはいかないタイプなので、決勝戦では『賞をとったから頑張ろう』とか『期待に応えられるプレーをしよう』という考えは全くなかったです。それよりも、ここまでのプレーを評価していただいて受賞できたからこそ、これまで通りに自分らしく戦おうと思っていました。振り返れば、公式戦デビューを果たした14年の同大会では予選の2試合に出場しただけだったので、チームの『タイトル』獲得は正直、心から喜べなかったけど、16年はそうではなかったというか。試合には負けましたが、決勝という痺れる試合を戦い、優勝を目の前にしながら『負ける悔しさ』を経験したことで、より『勝ちたい』とか『またあの舞台で戦いたい』という欲が強くなったし、その経験が、後の自分のパワーにもなった気がします」

残念ながら、今年のルヴァンカップは準決勝敗退となり、ガンバ大阪の4年連続の決勝進出は叶わなかった。だが、その悔しさを受け止めた上で、井手口は次なる高みへと目を向けている。「再び、より多くの『痺れる試合』を戦うためにも、ガンバでコンスタントに存在感を示して勝ちに貢献できる選手になりたいし、その結果として、日本代表にも定着して『必要とされる選手』になりたい」

果てなき野望は、しっかりと『今』を見据えながら描かれている。