鳥栖が苦しんでいるのは得点力だ。前節はアウェイで名古屋と対戦。前半は切り替えの速さを生かし、相手を押し込んだが、ボールを奪ったあとのパスミスが目立ち始めると体力を浪費。切り替えの速さも鈍り始めると名古屋にペースを奪われて、失点を喫した。結局、そこから挽回することはできずに敗れ、今季初勝利はお預けとなってしまった。これで今季リーグ戦は5試合でいまだ得点がない。昨季、明治安田J1第31節・松本戦で13分に金井 貢史(現・清水)が挙げた得点を最後に、シーズンをまたいで8試合連続で得点がない状況だ。目指すサッカーを体現できている時間は増えつつあるが、物足りないのはシュートへの積極性。得点を奪うためにも、ボールを握るだけでなくシュートを打つことへの意識を高める必要があるだろう。パスにしてもゴールに直結させるために縦の意識を強く持ちたいところだ。
一方の清水が苦しんでいるのはシンプルに結果だ。今季リーグ戦5試合を終えて、5連敗で勝点はゼロ。今季からピーター クラモフスキー監督を新しく指揮官に迎え、攻撃的なスタイルの構築に挑んでいる。千里の道も一歩から。掲げる理想は高いところにあるだけに、そう簡単に結果はついてくるものではないだろうが、苦しいシーズンのスタートになっている。前節もアウェイで神戸と対戦。前半にセットプレーから先制を許すと後半にも2失点。終わってみれば3失点での敗戦となった。
鳥栖が得点力で苦しむ一方、守備に課題を抱えるのが清水だ。今季は公式戦6試合すべてで複数失点を喫しており、リーグ戦で12失点は最多となっている。リーグワーストの得点力となっている鳥栖とリーグ最多失点の清水の対戦はデータの面でも興味深い対戦と言えるだろう。中3日での連戦となるだけに、コンディションを考慮すれば少なからずメンバー変更も行われるはず。苦しいチーム状況を変えるニューヒーローの台頭は、どちらのチームにとっても喉から手が出るほど欲しいところだろう。
互いに今季は公式戦で未勝利ながら、取り組んでいる新しいチームスタイルへの確固たる信念に揺らぎはない。金 明輝監督は「継続してやっていくしかない」、ピーター クラモフスキー監督も「厳しいレッスンだが、自分たちは取り組んでいかなければいけない」と前節の敗戦後に語っている。ともにボールを握ることで主導権を奪い、自分たちのペースへと持ち込みたいチーム同士。互いの長所をぶつけ合う中でどちらが目指すスタイルの質の高さを見せられるか。それが勝利へのポイントになりそうだ。
互いに“ゼロの呪縛”に苦しむチーム同士だが、この直接対決により、どちらかのゼロは必ず終わりを迎えることになる。今季初勝利という結果とともに“ゼロの呪縛”から抜け出すのはどちらのチームになるのか。
[ 文:杉山 文宣 ]
