甲府はJ2で18位とリーグ戦で結果が出ていないが、試合内容は悪くなく、天皇杯ではJ1相手にアラート感ある戦いを見せて、札幌(2○1)、鳥栖(3○1)、福岡(2○1)、鹿島(1○0)を倒し、決勝に勝ち上がってきた。ただ、リーグ戦は“内容で勝って試合に負けて”7連敗中で、その間に天皇杯の福岡戦、鹿島戦の2勝がある不思議な状況。準決勝の鹿島戦は敵地で開催され、何人かの選手は“県立カシマサッカースタジアムで鹿島に勝つのは難しい”という認識だったが、浦上 仁騎が入れたロングボールを足裏でコントロールし、GKをかわした宮崎 純真のゴールで勝利した。ただ、その宮崎が10月13日の練習中に負傷離脱しており、吉田 達磨監督はもともと選手層が厚くなかった攻撃陣をどうやり繰りするのかでさらに悩むことになった。
広島はJ1で3位につけており、1週間後のJリーグYBCルヴァンカップ決勝にも進出。公式戦6戦6勝だった8月から右肩上がりでシーズン終盤を迎えている。この広島について吉田監督は「いま、J1で一番強いチームではないか。休ませてくれない攻撃、守備はボールに向かってチャレンジしてくる力強いチーム。みんなが目指したくなるチーム」と高く評価。
天皇杯準決勝では京都との120分間の激闘を制して、決勝進出を果たした。リーグ戦ではアグレッシブさが裏目に出た退場もあり、直近の明治安田J1第32節は神戸に0-4で敗れた。神戸戦は京都戦から中2日の日程で、柏 好文ら主力組がベンチから外れ、ベンチに入れていた佐々木 翔を前半の早い時間に投入することになったが、アクシデントがなければコンディションを戻す時間は十分にある。過去5回はね返されてきた天皇杯決勝を制す好機だ。
広島の柏、佐々木、今津 佑太は甲府でプロキャリアをスタートさせた選手で、野津田 岳人は昨季期限付き移籍で所属し、甲府のJ2リーグ3位に貢献。彼らが乗っている車のタイヤも太いが、甲府とのつながりが太い選手も多い。彼らにとって天皇杯の決勝でJ2の甲府と戦うことは想像すらしたことがなかったと思うが、甲府の選手・関係者も決勝の相手がかつて在籍した選手が多い広島だということに縁を感じている。
かつて“地方クラブの星”と呼ばれた甲府は、ライバルクラブの規模拡大でJ2でも10位以下の予算規模と相対的な立ち位置が後退しているが、大きな責任企業のサポートを受けていないJ2クラブとして最初の天皇杯を掲げて、地方の小クラブの意地を見せたい。クラブの規模や選手層は広島が完全に上回っているが、「悪い時間帯があることを分かっていれば大丈夫。そこで『ヤバイ』と思うか、『広島は強いなぁ』と普通に思えるかどうかの違い」と吉田監督は話した。甲府はしたたかに粘り強く戦い、“これが天皇杯”という試合をやり切りたい。
[ 文:マツオ ジュン ]

