川崎Fは明治安田J1で17試合を終えて5勝5分7敗の14位に沈んでいるが、直近第17節・名古屋戦は2-1で勝利。4試合ぶりに勝点3を得た。勝利から遠ざかる時期にも川崎Fらしい攻撃、前線にボールが入った瞬間にあらゆる選手が前線に飛び出したり連動したりしながら相手の守備を崩す攻撃が得点につながっていたが、自分たちらしい攻撃を展開する時間、回数を増やしながら、守備とカウンターに長ける名古屋に勝利した。
それから1週間半の期間を経て天皇杯に臨むが、名古屋戦の翌日には控え組中心で栃木と45分×2本のトレーニングマッチを行い、4-1で勝利。好結果が続く状況に遠野 大弥は「チームの雰囲気はすごく良い」と頬を緩めた。
もちろん、天皇杯がそれらと性質が違う戦いになることを選手たちは理解している。今季のJ1で16試合に出場している大南 拓磨は、「大会が変わると全然違う戦いになるし、下のカテゴリーが相手でも難しい試合になる。プロ9年目で天皇杯の難しさを感じているし、簡単な試合はなかった」と気を引き締める。
大南は過去、磐田や柏でプレーしていた際も、アマチュアクラブに敗れた経験はないというが、「磐田のときに(今回と)同じ2回戦でHonda FCと対戦し、PK戦までもつれ込んだ」ギリギリの戦いを経験している。それだけに、「簡単な試合はない」という言葉に実感がこもる。
そのHonda FCでプレーし、磐田戦での勝利にあと一歩まで迫った経験を持つため、「格下と言われる側の気持ちがすごく分かる」というのが遠野だ。「人生を懸けていたし、失うものはなくて死に物狂いで戦った。格上側に来るとやりづらいと感じます」。
両方を経験している遠野に言わせれば、格上が苦戦する、格下が良い戦いを演じる要因は「メンタル」であり、この試合に懸ける気持ちを格上側が格下側に合わせるのは難しいが、川崎Fにとって一番の敵は油断やスキ、一瞬の気の緩みだろう。さらに攻撃的なチームが陥りがちなのは、ゴールを奪えない時間が続けば続くほどに焦って自滅すること。早い時間帯に先制するのが理想だが、仮にゴールを奪えない展開が続いた場合、焦れるか否かが勝敗を左右する。
裏を返せば、ソニー仙台FCにとっては耐えて相手を焦らせることが勝利の大きなポイントになる。上のカテゴリー、特に相手が川崎Fとなればボール非保持の時間、守備の時間が増えるはずであり、苦しい時間が続くかもしれないが、「ボールを持たれている」ではなく「ボールを持たせている」くらいの気持ちで試合を進められるか。JFLでは12位と、勝利や引き分けよりも敗戦の数が上回っているが、天皇杯で“大物食い”ができれば、リーグ戦の戦いにもつなげられるだろう。
前回王者が順当に3回戦にコマを進めるのか。それとも、過去にJ1時代の仙台、鹿島に勝利した経験を持つソニー仙台FCが“大物食い”を果たすのか。
[ 文:菊地 正典 ]


