「天皇杯は日本で一番大きなトーナメント。チャンピオンになりたいので、初戦はとても大事だと思っている」 町田の「攻撃の核を担っている」(相馬 勇紀)アタッカーの頭をよぎる記憶は、名古屋でのルーキーイヤーにあたる2019年度の天皇杯2回戦・鹿屋体育大戦。現在の日本代表の常連メンバーである伊藤 洋輝や、マテウス(現在の登録名はマテウス カストロ)を擁する名古屋が0-3という屈辱的な敗北を喫したあの試合だ。相馬 勇紀が言う。
「僕も大学生(早稲田大出身)だったので、その気持ちがよく分かりますが、大学生にとっては絶好のアピールの機会です。失うものもないですし、野心にもあふれていて、気持ちが乗りに乗った状態で挑んでくるでしょう」 実際に昨年度の町田は、筑波大の挑戦を前に痛い目に遭った。そうした苦い経験を教訓として、町田も「意地とプライドを持って戦う」と大卒ルーキーの桑山 侃士は語気を強める。
一方で“大物食い”をもくろむ京都府代表の京都産業大は、1回戦で滋賀県代表の守山侍2000を3-1で下し、町田との2回戦にコマを進めた。昨年の12月に全日本大学サッカー選手権大会準決勝で京都産業大と対戦した桑山 侃士(当時は東海大に在籍)は、相手チームの印象をこう語っている。
「関東の大学にはない独特なチームだったという印象が残っています。ほかのチームよりもライン設定が高かったですし、個人的にやりづらかった記憶があります。うまい選手が多かったですし、当時は自分たちでボールを保持するポゼッション(志向)のチームでした」 桑山 侃士がそう指摘するように、ボール保持志向の京都産業大は、プレス強度に優れた町田にとって戦術的なかみ合わせが良好な部類に入る。“黒田ゼルビア”自慢のプレスが、京都産業大の果敢な挑戦を呑み込むかに注目だ。
ただ、天皇杯制覇を目指す町田にとっての“頭痛の種”は、3日後に明治安田J1第20節・湘南戦を控えていること。中2日でのアウェイゲームは本拠地から近隣での試合とはいえ、ケガ人が多い町田はメンバー編成に苦慮しそうだ。一方でリーグ戦での出場機会が少ない選手にとっては、序列を変える絶好機。新たな戦力の台頭に期待するチーム主将の昌子 源は「天皇杯の2回戦を観に来るファン層は、クラブの未来を観に来ているのでは」と強調する。
代表チームでの活動により離脱中のオ セフンやミッチェル デュークに代わるターゲットマンとして期待も大きい桑山 侃士は言った。
「大学生のチームが相手とはいえ、公式戦であることに変わりはありません。もし点を取ったら、それなりの評価につながると思うので、FWとして得点にこだわっていきたいです」 今年の3月までは東海大の学生だった桑山 侃士にとって、「不思議な感覚」を抱く大学生チームとの天皇杯初戦。“先輩の貫禄”は自身のゴールで示す。
[ 文:郡司 聡 ]
