柏は28試合を戦って13勝5分10敗の勝点44で10位。ネルシーニョ監督の下でJ1昇格1年目を戦っている。26試合出場で25ゴールのオルンガの得点力が目を引くが、彼の個人能力に依存するのではなく、組織の中でこのストライカーを生かすところに柏の強みがある。
特に百戦練磨の名将が繰り出す戦略で、相手の長所を消す様は見事。守備を“ハメる”ことでペースをつかみ、巧みな攻撃陣にボールを託す。どの試合でも、相手のどのポジションへプレッシャーを強めるか、ピッチ上のどこで数的優位を作るかなどの意思統一がなされており、この試合でも柏がどこから守備をハメようとしているかに注目するのも面白い。
奪ったボールを託される攻撃陣の個性も見どころだ。強さとうまさを兼備したオルンガはもちろん、相手にとって予想外のところからでもパワフルなシュートを放つクリスティアーノ、お膳立てもフィニッシュも高い技術でこなす江坂 任らは、安定したパフォーマンスを見せている。25日の第29節・鹿島戦では堅実な守備からのカウンターが冴え、北爪 健吾、オルンガ、クリスティアーノときて、最後は神谷 優太の見事な軌道を描くシュートが決まって4-1と勝利。波に乗って仙台の地に乗り込む。
仙台は30試合を戦って4勝9分17敗の勝点21で最下位。木山 隆之監督が今季よりチームに植えつけようとしている攻守ともにアグレッシブなスタイルは、ケガ人が多発したことでなかなか進まず、リーグ戦で17戦勝ちなしと試行錯誤の苦しい時期も過ごした。しかし第27節・G大阪戦で4-0と大勝してトンネルを抜けると、この試合から2勝1分1敗と持ち直してきている。G大阪戦から4試合連続ゴール中の長沢 駿のように調子を上げている選手もいれば、左足からのパスで攻撃の道を切り拓く松下 佳貴や勢いよくゴールに迫る西村 拓真のように、負傷を乗り越えて終盤戦の活躍を誓う選手もいる。苦労した時期が長かったが、仙台は内容を改善し、少しでも高い順位に上がろうとしている。
仙台が調子を上げてきた理由の1つとしては、[4-3-3]の基本フォーメーションが機能してきたこと。ケガ人が多い時期は、あるときはウイング、あるときはSB、またあるときはボランチ……と特定のポジションで人数が不足して、フォーメーションを変えなければならなかったが、ケガ人が戻り、コンディションも回復してくると戦術的な蓄積が生きるようになった。ただ序盤戦で機能していた[4-3-3]に戻しただけでなく、試合の流れによって形を変えられるようになったことも大きい。例えばG大阪戦では、相手のプレッシャーをかいくぐって攻撃する中で[4-4-2]のような形に変形して、長沢のチーム3点目を生み出した。25日の第29節・鳥栖戦では、相手のパスコースを消すために[4-4-2]や[4-2-3-1]に変形して、後半から逆襲した。柏の見どころが相手の長所を消す戦略ならば、仙台はその戦略を無効化するため、フォーメーションがどのように変化するかが大きな見どころと言える。
チームの戦術が熟成してきた終盤戦だからこそ、それぞれの選手が個性を生かしつつ、チームとして互いの戦略を乗り越える様を楽しみたい。
[ 文:板垣 晴朗 ]


