開幕から続いていた苦しい時期を乗り越えて、昨季王者が“らしい”戦いぶりを発揮してきた。躍動感のある試合を披露できている原動力は“コンパクトさ”だ。攻守ともに良い距離感を維持することで、選手本来の能力をスムーズに発揮する下地を整えたとも言える。神戸がその生命線をあらためて取り戻してきている。
コンパクトさを保つために、相手の前線の選手に起点を作らせないことは重要だ。勝利を収めた直近の明治安田J1第11節・町田戦のあと、吉田 孝行監督は「相手にゴール前まで来られるとボランチはピッチ全体でアップダウンすることになってしまうけど、多くの場合でCBがしっかり弾けているから相手陣でボールを回収できている」と話す。マテウス トゥーレルが欠場した中、左CBに入った本多 勇喜と、右CBの山川 哲史を軸に高いライン設定を維持。試合を通してシームレスな攻守を実現した。
さらに、攻撃の距離感にも手ごたえを抱く指揮官は「(ボールを奪いに)相手が来てくれればいいけど、来ない相手に対しては自分たちから縮めていかないといけない。味方との距離もそうだし、相手のブロックにどう進入していくのか。そこがこの数試合、本当に良くなった」と目を細める。
そこに意欲的に取り組んだのが山川 哲史だ。「『チームが勝たないと』と思い過ぎて、ミスを恐れている部分があったので、気持ちを切り替えてうまくふっ切ることができた。『ミスしてもいいや』という感覚でやるようにしたら自信を持ってできるようになった」。明らかにボールを運ぶシーンが増えた背景を語った山川 哲史は、いまチーム全体に浸透するマインドをこう話す。
「いろんなところに改善する部分がある。チームが勝つために選手それぞれが少し変化させるだけでうまくいくことがあると分かった。(改善点を)みんなが真摯に受け止めて、チャレンジしようと毎日練習している。それがいまのチームの好循環につながっている」 ケガ人の復帰を含めて明るい材料が出ている王者に対し、アウェイに乗り込む岡山はやや足踏みが続いている。昇格初年度ながら着実に勝点を積み、第10節では昨季J1で2位に入った広島との“中国ダービー”に勝利して4位に浮上。混戦模様のJ1でインパクトを放ってきたが、前節・東京V戦に敗れて直近3試合は1分2敗と勝星から遠ざかっている状況だ。
ただ、今季は無失点勝利がすでに5回、敗戦した試合もすべて1点差と、ハードワークを原則に最後まで戦い続ける姿勢はどの試合にも表れている。攻撃でも良い形を何度も作っており、局面における個のクオリティーをいかに発揮できるかが勝ち切るために欠かせないテーマ。連戦の真っただ中、コンディション調整の難しさはあるが、集中力高くアウェイのピッチに立ちたい。
なお、神戸と岡山は1966年に創部された川崎製鉄水島製鉄所のサッカー部を起源とするチームとして知られる。当時を知る関係者にとって、J1では初となる両者の対戦を強くかみしめる90分ともなりそうだ。
[ 文:小野 慶太 ]
