「新しい記念日になったなと思います」 前節・川崎F戦の試合後に行われた監督会見の、最初の質問への回答だった。2001年4月29日にプロデビューした“ワンダーボーイ”はくしくも、25年後の同日に浦和の監督として初めての指揮を執ることになった。しかも就任は試合の前日。わずか1日の準備期間という状況から、田中 達也暫定監督はチームを連敗から救ってみせた。
「試合開始からプランどおりに運べたと思います」の言葉どおり、奇襲的な立ち位置も仕掛けてボールを握り、スタッツで圧倒する。川崎Fの長谷部 茂利監督も「大きくは変えられないし、変わらないと思っていたが、2つ違っていた。つなぎのところで長いボールが少なかったのと、8番(
マテウス サヴィオ)と10番(
中島 翔哉)がわれわれのサイドハーフの後ろでボールを受けようとしてきたのが少し困ったところだった」と舌を巻いた。
「『自分たちのストロングを出せばやれる。とにかく楽しんで戦おう』と言われました」(
安居 海渡) 「(やるべきことを)シンプルに伝えてくれたのでシンプルになったし、分かりやすい。みんな動きやすかったと思います」(
石原 広教) 準備時間が限られる中、田中 達也暫定監督は非常にシンプルに、かつ力強い言葉でミーティングを行ったという。今季は縦に速い攻撃を志向してきた中、テンポについても修正を加えた。連敗の最中にあって、ちょうどいいショック療法にもなったのだろう。ともかく沼は脱した。
ただ、前節の内容と結果が素晴らしいものだっただけにすべてが解決したかにも映るが、あまり良い状況でないことには変わりない。地域リーグラウンドは残り5試合となった中、勝点15のグループ7位。首位からは大きく離されている。まずは連敗を脱するというミッションはクリアできたが、残りのシーズンをどういうスタンスで戦っていくのかを整理しなければならない。
しかも、残り5試合のうちの3試合は、今節を含めたゴールデンウィーク連戦で終わってしまう。揺らいできたクラブへの信用はピッチ内だけで取り戻せるものではないだけに、現場としては当面、目の前の試合に勝利しつつ、どういったプラスαや方向性を持たせていけるかということになるのだろうか。より積極的な若手登用も出てくるかもしれない。
同じく苦境にある千葉は、前節・横浜FM戦で逆転負けを喫しており、こちらは連敗脱出ならず。小林 慶行監督も「失点で少しガクッというような部分がプレーに出てしまったかなと感じています。その流れをなんとかして切りたかったですが、そのままズルズルいってしまったゲームにはなってしまった」と肩を落とした。試合終了間際ながら1点差に迫ったゴールは光明となりそうだが、当の
呉屋 大翔は「個人的には数字が欲しいので(価値は)ありますけど、どちらかというとそれまでのプレーに納得していない」と自らを戒めた。
どちらも沼にハマりながら、変化を決断した浦和とチャレンジを継続してもがき続ける千葉。どちらが正解なのかは簡単に判断できるものではないが、正解にしようとする姿勢をピッチで見せなければならない。
[ 文:沖永 雄一郎 ]