富山は3月13日の1stラウンド1回戦でJ2の山形を破った。延長前半に先取点を許したが、同後半にルーキーの碓井 聖生と、プロ2年目の伊藤 拓巳が得点を挙げて逆転勝ち。以降のリーグ戦では得点が取り切れず、勝ち切れない試合が多かったものの、山形に勝った自信がチームを支えていた。また、神山 京右、平尾 駿輝など、この試合をきっかけにリーグで出場機会を得た若手が少なくない。J3第8節から第10節までの3連戦を2勝1分で乗り切り、ようやく歯車がかみ合い始めている。清水戦でも今後につながる収穫をつかみたい。
対する清水は今回が大会初戦となる。リーグでは4月20日に行われたJ2第11節・仙台戦を3-2で制して今季二度目の3連勝を飾るなど勢いが増してきた。異なる大会とはいえ、格下相手に不覚をとって良い流れを手放すわけにはいかないだろう。先々の戦いを見据え、リーグで出場機会が少ない選手の起用も考えられる。秋葉 忠宏監督がどのように采配を振るのか、興味深い。
富山では元清水の河井 陽介が今季からプレーしている。藤枝市出身で、プロ1年目の2012年から2021年まで清水に在籍し、リーグ戦においてクラブ歴代9位の241試合に出場した功労者だ。今季のJ3第3節・奈良戦でJリーグ通算300試合出場を達成している。岡山に在籍した昨季は清水戦での出場がなく、今回初めて古巣戦でピッチに立つ可能性がある。「そのときにどんな感情が沸いてくるのかは想像がつかない。ただ、サポーターの応援歌や奏でるリズムには懐かしさを感じるでしょうね。『まだまだやれるよ』という元気な姿を見せたい」と語っている。
富山の左伴 繁雄社長は、清水で2015年から5年にわたり社長を務めた。富山では2021年から任に就き、昨季はクラブ史上最高収益を記録するなど経営手腕を発揮している。2009年にJリーグ入りした富山が、オリジナル10の清水と公式戦で対戦するのは初めて。11年ぶりのJ2復帰を目指す今季、ルヴァンカップでも歴史的な金星を狙う。小田切 道治監督は「清水は個々の能力が高く、それぞれの個性を生かした攻めを柔軟に選択する力も備えている。われわれはグループで対応しなければいけない。恐れずにボールを奪いにいき、攻撃でもボールを動かすチャレンジをしたい」と考えている。
清水でもMF白崎 凌兵が古巣戦となる。期限付き移籍で2013、2014年に富山でプレーし、攻撃の中心を担った。富山のJ3降格が決まった2014年は5勝止まりの苦しいシーズンだったが、当時20歳だった彼は「自分がゴールを決めてチームを勝たせる」と常に口にし、エースの重責から逃げることなく歯を食いしばっていた。清水加入は河井と同期で、同じく今季のJ2第8節・徳島戦でJリーグ通算300試合出場を果たしている。そのうち富山での出場は50試合に過ぎないが、サポーターにとって記憶に残る選手だ。今回のカードが決まり、10年ぶりの帰還を心待ちにしているファンは少なくない。円熟したプレーに注目が集まる。
[ 文:赤壁 逸朗 ]
