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【J1・J2入れ替え戦:第2戦 柏 vs 甲府 甲府レポート】地方都市の星・ヴァンフォーレ甲府がバレーの6得点でJ1昇格(05.12.11)

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12月10日(土) 2005 J1・J2入れ替え戦 第2戦
柏 2 - 6 甲府 (15:04/柏/12,013人)
得点者:'10 バレー(甲府)、'27 バレー(甲府)、'52 レイナウド(柏)、'53 バレー(甲府)、'68 バレー(甲府)、'69 バレー(甲府)、'86 宇野沢祐次(柏)、'87 バレー(甲府)
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Jリーグ加入を目指すクラブチームの星が誕生した。その名は「ヴァンフォーレ甲府」。人口約88万人の山梨県、その県庁所在地の甲府市の人口は約19万人。この地方都市のサッカークラブは、大口スポンサーに頼らず、約200社という数多くの小口スポンサーの支援を受けてチームを運営し、日本プロサッカーの最高峰・J1リーグ昇格を果たした。この快挙は、地方都市でJリーグ加入を目指すクラブに、「工夫すれば出来る」という希望をプレゼントすることになった。

甲府がJ1・J2入れ替え戦第1戦(12/7)を2-1で勝ったものの、「J1の底力」、「個々の選手レベルの違い」、「手負いの柏」、「甲府の心の隙」など、甲府の昇格を祈れば祈るほど、湧き出てくる不安要素や老婆心を止められなくなる。しかし、第2戦でもアップのためにピッチに出て行く選手の表情からは「不安」や「過緊張」は感じられない。「闘争心」を感じさせる選手もいたが、多くの選手は入れ替え戦という注目される状況を面白がっていた。彼らには強烈なブーイングも「面白い」のだ。強化の責任者さえ、ゴール裏の柏サポーターに視線を釘付けにしていた。そして、迫力あるコールやブーイングをしばらく聞いてから、「楽しいなぁ」と顔を輝かせる。40歳を過ぎた男が敵チームのサポーターからブーイングを受けて、遠足前の子供や初めて海外に行った旅行者のような表情を見せる。甲府はクラブを挙げてこの状況を面白がっていた。甲府は田舎クラブなのかもしれないが、サッカーを純粋に楽しむ気持ちではJリーグのどのクラブにも負けていない。大木監督の信条である「サッカーはエンターテイメント」は、甲府だからこそ貫くことが出来るのだ。入れ替え戦を面白がることが出来るチームなんて他にないだろう。

立ち上がりから甲府が優勢にゲームを進めた第2戦。柏は4-4-2にシステムを変えて外国籍選手の一発の能力に賭けて来たが、シーズン中に出来なかったことは入れ替え戦でも出来なかった。10分、杉山が右サイドから上げたボールをバレーが右足で決めて甲府が先制。27分には石原がもらったPKをバレーが決めて流れは完全に甲府に傾いた。だが、2-0になったことで、頭に浮かんだのは次の1点をどちらが取るかということ。流れを変える1点になることが少なくないからだ。まだ老婆心は消せず、頭の隅にチョロチョロと流れている。

後半7分、その1点を柏のレイナウドに奪われてしまうが、1分後にはバレーがハットトリックとなる3点目を決めて柏の気持ちを折った。すでに永田を2枚目のイエローカードで失っていた柏は、局地的には反撃を見せるものの組織的に戦うことは出来なかった。期待の外国籍選手は5mもボールを追うと諦めて自分のポジションに戻ってしまう。全員サッカーには程遠い。柏の試合は完全に壊れていた。
そして、残り時間は「バレー祭り」となった。23分、24分、42分に、この試合2回目のハットトリックを決めてしまう。バレーは圧倒的なシュート力を見せ付けた。J2リーグの得点王は逃がしたが、入れ替え戦ではダントツの得点王。記者席後ろのラジオ中継席からは、興奮したアナウンサーの「甲府、夢のJ1“降格”」という壊れた言葉がメインスタンドにはみ出て来る。記者席もバレー祭りに翻弄され、「6点全部バレーだった?」と過去の記憶がバレーのキック力に蹴り出されていた。

岡田主審が試合の終了を告げた後、喜ぶ選手をスタンドからしばらく見守り、ピッチに下りた。祭りの主人公・バレーは号泣しながら感謝の言葉を話した。昨シーズン、大宮のJ1昇格に貢献しながらも、J1に連れて行ってもらえなかった無念さも感動の涙の一部に込められていたのだろうか。他の日本人選手の多くもJ1チームを解雇され、甲府で雌伏の年月を過ごした。しかし、J1を諦めていた選手はいなかった。「甲府でJ1に上がりたい」という気持ちでひとつになっていた。Jリーグの入れ替え戦史上初めて、J1チームを倒して昇格を手にしたJ2チームとして、彼らと「ヴァンフォーレ甲府」は永遠に名前を残す。また、J2で戦ったライバルチームにとっても、甲府の昇格はJ2リーグのプライドでもあり、希望でもある。

「走れ走れ 青と赤のオーオーオーオオ 誇りを持ち 今日も俺らと 甲府のロマンを オオオー」(CURVA SONGSより引用)

栄光の日、高らかに歌い上げられた甲府の応援歌。山梨県にヴァンフォーレ甲府というプロサッカーチームが存在する幸せがここにある。


以上

2005.12.11 Reported by 松尾潤
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