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かつてＪリーグを席巻した磐田にとって、０３年度の天皇杯以来となるタイトルが、うっすらとではあるが見えてきている。サポーターたちも、『優勝』の２文字にあと２つで手が届くという戦いを前に、まだ早いとは思いながらも、高まり始めた久しぶりの期待と緊張を抑えられないでいるのではないだろうか。リーグ戦で下位に沈んでいた今季前半を考えれば、ヤマザキナビスコカップ準決勝進出は少々意外かもしれない。しかし、いまの磐田は、苦しんだ時期とは大きく異なる。再開後は勝点が伸びなかったが、19節の神戸戦で勝利を挙げると、そこから６戦で５勝１敗。唯一敗れたＧ大阪以降、ここまで３連勝で、内容も良い。ここのところの好戦績は、チームの好調としっかりリンク。磐田のサッカーが出来てきていることを証明している印象だ。
中断前の12節川崎Ｆ戦で長いケガから復帰しいきなり先制点を挙げたＦＷジウシーニョは、中断期のヤマザキナビスコカップを足がかりに調子を上げゴールを量産してきている。ストライカーの仕事だけではなく、前線で圧巻の “ゲームメーカー”ぶりをみせているＦＷ前田遼一も、しばらくゴールから遠ざかっていたが、ここ３試合で４得点。この２トップに周囲が絡み攻撃に厚みが出るシーンも増えている。やはり調子を上げている山本康裕や上田康太、船谷圭祐ら若手ＭＦの活躍、そして、サイドだけではなく中に入り込んで攻めに絡むＤＦ駒野友一のプレーが光る。２試合前のホームでのＦ東京戦では、彼らが流麗にパスをつないで相手を完全に崩す磐田らしい攻撃で敵ゴールを陥れた。そんないまの磐田のサッカーを支える大きな要素となっているのが、センターバックの安定だろう。ベテランＤＦ古賀正紘（第１戦は出場停止）がＤＦイ・ガンジンとコンビを組んでから、中断前に急成長したＤＦ加賀健一の負傷離脱以来、いまひとつ安定しなかった最終ラインが引き締まった。ＭＦ那須大亮も本来のボランチに戻りアンカーとして守りの強さに大いに貢献。前節の京都戦は相手に攻められる時間も多かったが、守備ブロックを高い位置で保ち、ペナルティエリアに進入されてのピンチは与えず。柳下正明監督も「今日は安定した守備ができた」と手応えを語った。
再開後、なかなか勝利できない時期は、内容は良いのに勝てない試合が多かったが、いまは多少内容が悪くても勝ちきることができるようになっている。苦しい時期は、練習後に話しあう姿がみられ、選手がクラブハウスをあとにする時間も遅かったが、いまは引き上げる時間も早く表情も明るい。そんなところにも好調ぶりがうかがえる。大事な準決勝だが、チームに変な力みはない。磐田は、申し分のないチーム状態で準決勝に臨めそうだ。
視界のなかに浮かびあがった優勝カップのシルエット。その前に立ちはだかるのは、昨季のファイナリストの川崎Ｆ。ギアが入ると、のびやかな速攻で爆発的な得点力を発揮する強豪に、いまの磐田の攻守がどう機能するのか注目だ。ホームという利がある第１戦で、先勝することはもちろん、失点しないことも決勝進出への大事なポイント。ホームで先に２−１で勝利したものの、０−１で敗れれば仙台が勝ち抜きとなった準々決勝第２戦はスコアレスドローだったが、０−０の状況は非常に苦しかった。さらなる強豪相手だけに、いまの調子をしっかり完封勝利に結びつけ、アドバンテージを握って敵地に乗り込みたい。
以上
