11月27日（日） 2011 J2リーグ戦 第37節
北九州 1 - 2 東京Ｖ　（16:33／本城／7,080人）
得点者：41' マラニョン（東京Ｖ）、73' 福田健介（東京Ｖ）、78' 池元友樹（北九州）
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プレビューで触れた北九州の右サイドバックのアクセント。それは金鐘必の起用だった。ボールを保持しながらスピードを持って仕掛けていく金鐘必を、ボランチやサイドハーフではなくサイドバックで使う――。関光博の出場停止によって空いたポジションを、穴埋めではなく、攻撃的に生かすための起用だった。
三浦泰年監督が「関の代わりをやるんじゃなくて、金鐘必の持った特性というものをいかしてほしかった」と話したように、確かに関の代わりではなく金鐘必は"金鐘必らしい"プレーを出そうとした。ただそれを「鳥栖戦が終わってから数日」（三浦監督）ではめるのは難しかった。しかし、サイドバックに関とは違うプレースピードを持った選手が入ることで、関との連動に慣れてしまっていた右サイドやＦＷに別の緊張感、別の可能性が出たのもまた事実。金鐘必本人を含め、経験値が上がる試合になったと評したい。

試合を振り返っていくが、双方ともに狙いとする攻撃ができたとは言い難い。
北九州は最終ラインの背後を突く長めのボールを送りそこに池元友樹らＦＷを走らせるような場面が多かったが、東京Ｖの堅牢な守備を破るのは難しく、なかなかフィニッシュまでは持ち込めない。
東京Ｖは前半は右サイド、後半は左サイドに入ったＭＦアポジのドリブルを武器にサイドアタックを仕掛ける。ただＦＷ巻誠一郎と阿部拓馬もハードワークを続ける北九州のセンターバックに動きを封じられてしまう。

双方がフィニッシュの手前でボールを失う展開が続いていた23分、東京Ｖに１回目のアクシデントが起こる。巻が足を痛め、交代せざるを得なくなってしまったのだ。――東京Ｖに２度も起こるアクシデントは、結果としてみれば東京Ｖに追い風となった。
急きょマラニョンを投入することになるのだが、アップもそこそこに出てきたマラニョンが北九州の守備陣を翻弄する。41分に東京Ｖが北九州のミスを突いて速攻を仕掛け、「本当によく集中して入れてくれた」と川勝良一監督が驚きとともに評価した絶妙のクロスをＭＦ河野広貴をゴール前の供給。マラニョンが収めて先制ゴールを奪う。

後半には巻だけでなく阿部も負傷交代。２度目のアクシデントではＤＦ福田健介を投入するのだが、なんと今度は福田が追加点を奪う。
73分。アポジが左サイドの空白スペースをえぐってクロスを上げると、そこにペナルティエリアの右後方から福田が走り込んできてヘディングでゴールイン。「今年も取れて良かった」とはにかむ今季初ゴールで東京Ｖがリードを２点差に広げた。

北九州は後半、林祐征を入れ、さらにレオナルドをトップ下に置く超攻撃型の布陣。その中で２点目を奪われるが、引き気味になる東京Ｖに対して波状攻撃を仕掛けるようになる。そうして78分に森村昂太から木村祐志へと短く繋いだボールを最後は池元が鋭いミドルシュート。右足で振り抜いたボールはゴールの左隅に吸い込まれ１点を返す。

ただその後も決定機は作ったが、いずれも決めきれず、北九州の反撃はこの１点にとどまった。東京Ｖ・川勝監督が「粘り強さを最後のほうで出せた」と話したように、その粘り強さが上回ったとも言えよう。

ホーム最終戦を勝利で飾れなかった北九州。しかし「リスクを冒しながら攻撃的なサッカーはできた」という三浦監督の言葉のとおり、そして冒頭でもプレビューでも述べたように、出場停止選手を逆手にとって新しいカラーを出そうとした。この挑戦は評価したい。
もっとも、（負け惜しみを言うわけではないことを断っておいて、）結果としてみれば、ホーム最終戦を勝利しなかったことは次戦そして来季に向けた勝利への飽くなき欲望に変化してくれるはずだ。――そう思って、今季のホームゲームを締めくくる原稿に筆をおきたい。

以上

2011.11.28 Reported by 上田真之介