最近の日経平均と平均入場者数がいい勝負をしている甲府。東証の時価総額が日本の国内総生産（GDP）の75％程度というのがこれまでの平均値らしく、08年の頃ならこの比率に相当する日経平均は12000円位になるらしい。当時の甲府は同程度の平均入場者数を誇っていたと思うが、今はGDPや東証の時価総額が下がっているのと同じく、残念ながら停滞気味。その理由なら――書きにくいことを含めて――いくつでも思い浮かぶけれど、どうすれば増やすことができるのかと考えれば、「ハーフタイムにAKB48か嵐に歌ってもらう」くらいのことしか思い浮かばない。数字だけを追いかけ、達成して満足するつもりはないけれど10000（人・円）割れはどっちの数字だとしても何となく寂しい。あやふやな知識で強引に結びつけるが、甲府がシーズン途中の補強を行う余力を得るために12000人くらいの数字は必要。クラブはいろいろ対策を考えているようだが、昇格と降格を2度経験するとどうもフレッシュさが足りなくなってしまう。それを埋めるだけのパッションが必要だが、人は刺激に慣れるから次はJ1でACL出場権争い以上のことをやるしかないのだろうか。そのためにも甲府は流れを右肩上がりに持っていかなければならない。

今節、山梨中銀スタジアムに迎える相手は草津。ゴールデンウィークをいい気分で過ごせなかった甲府と草津がちょっと地味な感じで「激突」する。でも、余所様から見て大注目の試合でなくとも、甲府と草津のファン・サポーターにとってはバイエルン・ミュンヘンとチェルシーの試合以上の注目カード…のはず。6連敗中の草津の方が苦しい状況だが、ここ最近、甲府ホームの対草津戦4試合の記録を見ると、1勝1分け2敗と甲府は分が悪い。スタジアムの名前が小瀬から山梨中銀になったのだから過去のジンクスはチャラになっているはずだが、連勝も連敗もいつかは止まるもの。怖い、怖い。草津の連敗を止める地雷をホームで踏みたくはない。キャプテンの山本英臣は「草津は一発を持っている選手がたくさんいる。自分たちが90分間しっかり試合を作っていくことが大事。点を取っても取られても90分の戦いだということを考えてサッカーをやっていきたい」と話す。一発といえば、松下裕樹にミドルを決められた記憶が蘇ってくる。熊林親吾と島田裕介（現、江原FC）のテクニシャンに、ハード系の松下と櫻田和樹のボランチというイメージが強い。ただ、今年は5試合以上出場している選手が19人で、多くの選手にチャンスが与えられている。逆の視点から見ればそれだけ先発の11人を決めることが難しいということになる。念のために甲府の選手も同じ条件で数えてみると16人。3人差じゃ、なんも言えねぇ。

前節の草津はFWリンコンを先発させて前半のうちに交代と不穏な空気を感じるが、交代で入った金成勇の方が嫌な感じ。ディフェンスラインの裏にボールを出した熊林のパスも素晴らしかったし、金成勇もディフェンダーに挟まれながらも強さと冷静さを発揮してゴールを決めた。甲府としてはこのようなシーンは作らせたくない。今節は、この部分でもボールへのアプローチとその状況によるディフェンスのラインコントロールなどのベーシックの部分を確認している。サッカーはミスのスポーツなので、実際の試合になれば予想外のことが起こってしまうが最終的には対処できるディフェンスラインだと信じたい。気になるのは草津の選手がどんなモチベーションで乗り込んでくるのか。上手く切り替えて、思い切りの良さを出せるような雰囲気作りができるのかどうか。苦境でも応援してくれるファン・サポーターの気持ちに応えたいはずだ。

ドイツ軍かイギリス軍か、応援するチームが決まっていないチャンピオンズリーグの決勝、女子にしか興味がないバレーボールのロンドン五輪世界最終予選、たぶん寝ていて見られない金環日食、混むのが嫌だから2年くらいは行かないスカイツリーのオープンにセ・パ交流戦と「やっぱり白鵬か」で大混戦の夏場所と、週末から週明けに興味をそそられることが多い。そのなかで気分よく金環日食を見る気になれるのは甲府サポーターか草津サポーターか。結果が伴わない流れを変える勝利を呼び込むのはどっちだ。

以上

2012.05.19 Reported by 松尾潤