春の終わりから夏の初めまでの約1カ月半もあった長い長い中断期間。中断直前の記憶が薄れている人は少なくないと思うが、1カ月半も公式戦がないと、「ヴァンフォーレの試合を見たい」というファン・サポーターの気持ちは相当に高まっているはず。7月19日のリーグ戦（Ｇ大阪＠万博）の再開前に天皇杯2回戦を戦うのは都合がいいのか、やりづらいのかはわからないが、守備の安定だけでなく得点力も右肩上がりで中断期間に入っただけに、そのことを思い出せば期待が大きくなるのは当然。あのとき掴んだ自信を結果に繋げたい。

ただ、天皇杯の初戦でいつも苦労している記憶は何年も積み重なっているので、「大学生が相手だから楽勝」だなんて思っている青赤の血が流れている山梨県民は1人もいない。城福浩監督も「相手は明治大学。何年後かにプロになる選手もいると思うし、彼らはこの大会で失うものはない」と言う。過去に天皇杯でJクラブを何度も撃墜してきた実績もある。本大会出場が5年ぶりとはいえ、選手が入れ替わったとしても明治は明治。半年前まで大学生の稲垣祥は、「僕が大学（日体大）を卒業してまだ半年。大学生のレベルはわかっているつもりだし、今の大学生と（プロになった自分の）何かが違うとは思っていません。誰が相手でも100％のプレーをしないと自分の良さは出ないと思っています」と話す。彼が明治大戦に先発するかどうかはわからないが、J1リーグ戦で5試合、ヤマザキナビスコカップで5試合に起用されている「理由」を「差」として見せ付けるプレーに期待したいし、甲府でレギュラーを掴みつつある勢いを見せてほしい。

明治大戦は中断期間明け最初の公式戦なので、開幕戦同様にやってみないとわからない試合であることは確か。中断期間中のトレーニングマッチではいい試合もあったし、課題が目立つ試合もあった。城福監督は、ポジティブもネガティブも上手くオーガナイズして選手を送り出す準備をしてきていると思うが、「（トレーニングマッチで）中断前の公式戦モードのディフェンスをやれているのかというと、実は最近はやれていない。最終ラインの意識はまだトレーニングマッチのモードのところがある。（7月9日のトレーニングマッチで）岐阜に負けたことで、みんなが『もっとやらないといけない』と思えたことはよかったと思う」と、中断期間中最後のトレーニングマッチで敗れたことを教訓にして公式戦に活かそうとしているし、それを自覚できている選手は少なくないはず。この辺りはベテラン選手が多いチームだけに、「頼むで」と背中をポンとたたきたいところ。

中断前のチーム状態に戻すなら、極端に言えば同じメンバー、同じポジションでやればいいのだが、選手もポジションも少しずつ変わっているのが現状。中断前を超えるつもりで準備してこその現状維持であって、現状維持を目標にすれば後退してしまう。J1他クラブの中には結構派手に補強をしているリッチクラブもあるので、再開は第2の開幕戦でもある。城福監督は、天皇杯2回戦という公式戦と翌週末のJ1第15節をリンクさせて捉えているので、明治大戦では何らかのトライをすることも予想できる。このトライが上手くいって90分で勝利することが一番気分のいい勝利。このトライが何なのか、トライができる展開に持ち込めるのか。天皇杯2回戦はじっと目を凝らしてみれば、後半戦の甲府の戦い方を感じ取ることができる試合になるかもしれない。プレーする選手も観戦するファン・サポーターにも厳しい15時キックオフの最高気温32度・晴れの予報。山梨中銀スタジアムにはビキニのように小さな屋根しかないが、日焼けと熱中症対策を十分にしてJFK甲府の天皇杯初戦を後押ししてほしい。今年はJ1残留だけではなく、天皇杯で躍進して山梨を盛り上げるつもりの甲府。一緒に天皇杯の夢を見よう。

以上

2014.07.11 Reported by 松尾潤