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【J1:第33節 川崎F vs 広島】レポート:最後まで勝ちきれなかった両チーム。特に川崎Fは等々力での今季最終戦であり、等々力最後の試合となるジェシを勝利で送り出せない悔やまれる試合に。(14.11.30)

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「ありがとう」なら話はわかる。でもジェシは違った。しっかりと別れを告げようと麻生練習場を訪れたサポーターに「ごめんなさい」と謝っていた。そう口にしたジェシに話の訳を聞こうとミックスゾーンで待つが、いつまで経っても現れない。現役の大学生ながらプロデビュー戦の大舞台をそつなくこなし、時の人となった車屋紳太郎が同郷の先輩である谷口彰悟とともにミックスゾーンを去った17時過ぎになってもなお現れない。広報に確認すると、別れを惜しむサポーター一人ひとりと話をしていると聞かされてゴール裏付近に視線を送ると、そこにジェシの姿があった。その場に残る全てのサポーターと言葉をかわし続けたジェシは、最終戦のセレモニーが終わったあと、およそ1時間半にわたってサポーターに別れを告げていた。

結局ミックスゾーンで取材が始まったのが17時56分。わずか3年の在籍ながら、サポーターに愛されたジェシの人柄の一端が伝わってきた。

79分にピッチに立ったジェシにとって、最初のFKとなった82分の場面。ファールされた車屋が蹴る素振りを見せたFKをレナトが制すると、このボールをゴール正面のジェシの元へ。盟友の気持ちが込められたパスについて聞いたあと、改めて「訳」を聞いた。「なぜ、ジェシはごめんなさいと謝っていたのですか」と。

突如としてあふれる涙のため、しばし絶句したジェシは喉の奥から漏れてくる鳴き声を耐えながら言葉を紡いだ。

「タイトルをプレゼントできなかったことに対する謝罪です」と。そして涙は止まらなくなった。

勝負の世界の話である。選手たちが全力を尽くしてプレーして、それでも勝てないことがあることはよく理解している。だからこそ、謝ることなんてないのに、彼は何の計算もなく謝る。そんな人間性を持つ選手であることは、サポーターにも伝わる。だから好かれもする。等々力を訪れたサポーターは勝利をジェシと共に喜びたかった。だけど、できなかった。

サッカーの神様が居るのだとしたら、こんなシナリオは書かない。試合前に今季限りで契約が満了することが発表されていたジェシを勝利で送り出したい。そう願う等々力のサポーターの前で喫したのは試合終了目前の88分の失点だった。サッカーの厳しさを思い知らされるバッドエンドだった。

この日の川崎Fは、完璧な立ち上がりを見せる。プロデビュー戦の車屋に加え、3バックの右には本職ではない武岡優斗が入ると、強気のラインコントロールを続けて広島を封じ込め、試合を優位に進める。

大島僚太は青山敏弘からの厳しいチェックを受け流しながら中盤をコントロール。出色の出来を見せた稲本潤一が広島の攻撃の芽を摘み続けた。高い位置を保ち続けた大久保嘉人が広島の脅威となる事で試合を優勢に進めた川崎Fは今週から初めたディフェンスセットだとは思えないような戦いぶりで、広島を圧倒した。

広島の攻撃は皆川佑介に付ける縦パスを起点としていたが、その皆川が思うようにパスを収められない。浅野拓磨、野津田岳人が時折チャンスに顔を出すが、彼らをフォローしている柏好文にしても、清水航平にしても、攻撃参加するだけの時間がなく、攻撃は単発だった。広島にとって難しい時間が続いた。

川崎Fペースで推移した前半34分に大久保が先制点を奪う。レナトからパスを受けた森谷賢太郎がダイレクトでゴール前に走りこむ大久保嘉人にクロスを入れる。

「レナトのボールが、ちょっとスペースに流してくれるボールで、その時に中を見たら嘉人さんがファーでGKとの間で待ってるなと思ったし、下もスリッピーだったので、上手く入れれば何か起きるかなと思って」と森谷。

「ああいうボールが来れば必ず決める準備はしているので、良かったです」と話す大久保は「得点王がかかっているから」とボールを抱きかかえ、素早くリスタートしようとした。広島を前半シュート1本に抑えた完璧な内容を、先制点という結果に結びつけた川崎Fだが、試合は後半に入って大きく転換する。広島が57分に佐藤寿人と高萩洋次郎とを投入した事でペースを広島に奪われてしまったのである。

最終ラインを相手にした佐藤の駆け引きにより、川崎Fは全体をコンパクトに維持する事ができなかった。車屋は、佐藤の駆け引きについて「常に間のポジションを取ってくる」と舌を巻きつつ、広島のプレーで一番嫌だったものとして、高萩の存在感を挙げる。

「高萩選手が何してくるかわからないところでした。試合をテレビで見てても、思っていて、そこは怖かったです」

彼ら2枚の投入により「動きが付いた」ことが、劣勢につながったとの認識を示すのは大島である。更に言うと、川崎Fは攻め疲れしたのか後半運動量が落ちていた。その点については高萩が「相手はかなり足が止まっていた」と証言しており、「攻撃だけ、というか、攻撃に比重を8割くらい置いてできた」と述べている。

いずれにしても、森保監督の交代采配が広島を活性化させ、それが後半の試合展開を大きく変えた。次々と訪れるピンチを西部洋平を中心とした川崎F守備陣が防ぐ中、等々力が待ち望んでいたジェシがピッチに姿を現わす。79分の事だった。

ジェシは足を気にし始めた小宮山に代わりピッチに立ち、システムは3バックから4バックへと変更された。この交代采配もあり、試合終盤にペースを奪い返した川崎Fが打ち合いに持ち込む中、広島に同点ゴールを奪われてしまう。川崎FボールのCKからのカウンターで与えたCKを佐藤に押し込まれてしまうのである。88分の事だった。

ホーム最終戦を勝利で終えたい川崎Fは、どうしても勝ち越しゴールを手にしたかった。ゴール前に肉薄する場面を作り出したが、ゴールをねじ込むまでには至らず。前半の攻勢を後半にも継続できなかった川崎Fのゴールは1得点にとどまり、広島に勝利するには至らず。ジェシにとっての等々力最終戦を勝利で終えることができなかった。

タイトルも、ホーム最終戦での勝利も、もたらすことができなかったジェシだが、一つだけ置き土産を残している。90+4分にペナルティエリア内で佐藤が放った決定的なシュートの場面。完全に1点もののこの場面について、同点ゴールを賞賛された佐藤が振り返る。

「まあでも最後決められなかったので。ジェシのスライディングした足に当たってしまったので」と話し、決勝ゴールになりうるシュートをブロックしたジェシのファインセーブを賞賛した。佐藤は試合終了直後、確実に1点になっていたはずのシュートをブロックしたジェシと笑顔で握手。本気で殴りあったもの同士がわかるリスペクトの瞬間に見えた。

サッカーに神様がいると考えるのは、八百万の神を信じる日本的な心情であろう。だが、ジェシが信じるキリスト教は唯一絶対神の存在を教えている。キリスト教徒は、自らに訪れるバッドエンドを神様から与えられる試練として受け止め、それを、乗り越えられるものとして教えられている。だから不運を前に彼らが口にする「oh my god」とは、すべてを超越するただ一人の神に対し「神様、なぜこんな試練を私に与えるのですか?」との率直な問いかけである。「この試練はつらすぎます」との魂からの叫びである。

土壇場で引き分けに持ち込んだ広島にとって1−1は悪くはない結果だ。しかしホーム最終戦の川崎Fにとってはバッドエンド以外の何物でもない。でも、この日のこの結果を誰よりも「バッドエンド」だと感じたジェシは、これを乗り越えられる試練として受け止めたはず。壁がある方が人間は進歩できる。分厚い手のひらで握手を続け、泣きながら、謝罪の気持ちを口にしたジェシが川崎Fの一員としてプレーできるのは、リーグ最終戦まで。それまでの間に、彼はどんな進歩を見せてくれるのだろうか。最終戦は神戸とのアウェイマッチとなるが、勝ちきれなかった今季を締めくくる試合に期待したいと思う。

土壇場で試合を降り出しに戻した広島にとっても、関東圏で勝てないシーズンだった。広島は広島にとっての課題を持ち帰り、ラストマッチに向けてチームを鍛えることになる。

以上

2014.11.30 Reported by 江藤高志
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