4月29日（日） 2007 J2リーグ戦 第12節
鳥栖 2 - 1 東京Ｖ　（16:03／鳥栖／7,023人）
得点者：'37 藤田祥史（鳥栖）、'46 金澤慎（東京Ｖ）、'62 廣瀬浩二（鳥栖）

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この試合のターニングポイントは、55分の交代に尽きる。
この試合、鳥栖の岸野監督が切った交代カードの1枚目が、鳥栖に勝ち点3を呼び込み東京Vに6連敗の苦汁を嘗めさせた。そのカードは、決勝点を挙げた廣瀬の投入だった。

それまで、東京Vはボランチに入った服部を起点に、両サイドにボールを散らしていた。前節の反省点を生かして、中央突破だけではなく、サイド攻撃も織り交ぜて鳥栖のゴールに攻め込んでいた。
ただ、前半にゴールを挙げたのは鳥栖。この日、公式戦で初めて右サイドDFに入った日高が、中央で東京Vのゴールをインターセプトした。左サイドの高地がそのボールを受けると、前線でゴールに向かった藤田に送った。東京VのDF戸川と競り合いながら、藤田はGKの位置を確かめて、左足のループシュートで先制点を挙げた。
鳥栖のチャンスらしいチャンスは、前半はこの1本だけ。後は東京Vがボールを散らすも、得点源であるFWフッキにうまく渡すことができなかった。鳥栖の選手全員で意思統一を図っての守備を行ったからだ。

ラモス監督（東京V）が先に動いた。後半の開始から、MFに永井、FWに飯尾一慶を入れてきた。この起用は、東京Vに同点となる機会を与え、55分までは機能していた。46分に左サイドから永井が持ち込み、ゴール前に詰めた金澤が右足で押し込んだ。このゴールで東京Vが完全にペースを掴むものと思われたが、その流れを断ち切ったのが、55分の岸野監督(鳥栖)の交代カードである。

永井がボールを持つと飯尾一慶がスペースを見つけては前線を縦横無尽に動いていた。その結果、空いたスペースに右サイドMF金澤が走り込んでは、鳥栖のゴールを脅かすことができた。
その動きを封じようと岸野監督が選んだ作戦は、金澤に山城(鳥栖)を当てることだった。廣瀬は右サイドMFに入り、山城が左サイドMFに回った結果、金澤の動きが止められただけではなく、鳥栖の右サイドが活性化した。
62分に藤田が放ったシュートのこぼれ球を廣瀬が拾って、東京Vゴールの右隅を狙って蹴りこんだ。このゴールは、鳥栖に3試合振りの勝利を呼び込み、東京Vに6連敗の結果を与えるものとなった。

勝負のターニングポイントは55分の交代だったが、その交代を判断させるための伏線があった。前々節の湘南戦(4月22日・0-5の完敗)直後、選手たちだけで3時間のミーティングを行った。一昨日の練習後、前節京都戦(4月25日・押し込まれながらも1-1の引き分け)のVTRを選手だけで見て、意見を出し合った。
それは、チームに新たな約束事を作り、試合中のコミュニケーションを明確にした。選手たちで「やれること」を明確にしたことにより、岸野監督の戦術眼が更に生きての交代カードとなったのである。選手を信じ、監督の指示を理解したチームの結束が、今節の勝ち点3につながったと言える。

選手たちのミーティングの内容は明かされていないが、間違いなく「相手よりも勝負にこだわる意識をどのように出すか」というものに違いない。この日の鳥栖の選手たちのプレーは、それを証明してくれていた。

終了のホイッスルと同時にスタンド全体が一斉に立ち上がり、拍手と歓声に包まれたことは、スタンドのファンもこの日の勝利を待ち焦がれていたことの証明である。なかなか結果が出なかった鳥栖が、苦労の末に掴み取った勝ち点3は、単なる１勝では終わらない。次節、前回の戦いで完敗を喫したC大阪戦につながる勝利といえる。

90分間、両チームとも持てる力を出してくれた。
見る人全てが内容には満足したに違いない。
しかし、勝負事を語るに勝敗を抜きには語れない。
この日は鳥栖が笑って、東京Vが涙を流した試合だったが、次節のリーグ戦は容赦なく迫っている。
お互いに次節も熱い試合を見せて欲しい。

以上

2007.04.29 reported by サカクラゲン