3月7日(日) 2010 J2リーグ戦 第1節
鳥栖 1 - 1 札幌 (15:03/ベアスタ/8,971人)
得点者:21' 藤田征也(札幌)、84' 飯尾和也(鳥栖)
スカパー!再放送 Ch181 3/8(月)14:00〜(解説:サカクラゲン、実況:君崎滋、リポーター:ヨンヘ)
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どんなに経験していても、やはり緊張するに違いない。どれだけ準備をしていても、不安を感じずにはいられまい。約1ヵ月半のキャンプを終えて、開幕戦を迎える選手たちとて、その心境は同じであろう。それが開幕戦であり、そこを踏まえて多くのサポーターは試合を観戦したに違いない。2010年鳥栖の開幕戦は、肌寒いベストアメニティスタジアムで始まった。
今季の鳥栖は、選手の半数が新加入で占められた。この日のメンバーも、18人中9人が新生サガン鳥栖のメンバーである。それだけに、連係に不安を感じてしまうが、松本育夫監督以下、異例とも言える早朝練習でチームの連帯感の強化を図り、「これまでにない最強のチーム」(松本監督)が出来上がっていた。目指すサッカーは、『中盤でつないでサイドから崩す』サッカーである。確かにそれを実践できる選手たちが揃っている。あとは、勝点3を掴み取るだけだった。
対する札幌は、2年目の石崎信弘監督が『アグレッシブなパスサッカー』の完成度を上げて鳥栖に乗り込んできた。昨季は積極的に若手を起用し経験を積ませて、6位でシーズンを終了した。各ポジションに即戦力を補強し、昨季よりも確実に力をつけている。何より、2トップにして、より攻撃的になっているのが、今季の特徴である。あとは、勝点3を手土産に帰るだけだった。
しかし、終わってみると勝点1を分け合った内容である。両チームの指揮官は、「サイドからの攻撃が・・・」と言葉は違うが、目指すサッカーが不完全燃焼に終わったことを試合後に示唆していた。これが、開幕戦の持つ『魔物』なのかもしれない。立ち上がりから、両チームとも激しいプレスをかけるがために、中盤を経由せずに前線にボールを送る結果となった。
「スペースとサイドを使ってつなごうとしても、相手のプレッシャーが予想以上に厳しかった」とGK室拓哉は、前半の印象を語った。これは、札幌も同じ印象を感じていたに違いない。
目指すサッカーとは違っていても、時間は容赦なく過ぎていく。シンプルな縦パスの応酬の中では、一瞬のスキが大きな痛手を負うことがある。それが、21分の札幌の先制点である。センターサークル付近でボールを受けたMF上里一将は、鳥栖DFラインの裏にスペースを見て取った。MF藤田征也もそのスペースを感じ取っていた。鳥栖のボランチは、一瞬だが上里へのアプローチが遅れた。今季のベストアメニティスタジアムのファーストゴールは、アウェイのチームが挙げたものだった。
ハーフタイム中に、松本監督は選手たちに「前へ急ぎ過ぎる必要はない。無理ならビルドアップ」と指示した。64分には、MF野崎陽介に代えて、新加入のMF早坂良太を送った。72分には、FW萬代宏樹を送った。79分にもサイドバックにも日高拓磨を入れて攻撃の活性化を図った。そして、84分の同点弾へとつながっていった。札幌ゴール左斜め25m地点で得たFK。早いリスタートで萬代がMF金民友に送り、ファーサイドでフリーになっていたDF飯尾和也が左足で豪快に蹴りこんで追いついた。札幌のDFが、一瞬だが金への対応が遅れた。今季の鳥栖のファーストゴールは、チーム最古参選手となった飯尾があげた。
相手があるから想定外のことも起きる。
どんなに準備をしていても、十分と言えることはない。
ボールをゴールへ運ぶからボールを奪われるのであり、ボールを奪うから得点へとつながるのである。
これがサッカー。
勝利を目指すから、真剣勝負となる。
ボールが1個しかないから、奪い合いが起きて競技となる。
得点が多い方が勝者となり、失点が多い方が敗者となる。
これもサッカー。
開幕戦というシーズン最初のゲームの持つ独特の雰囲気に、互いに実力を出し切れなかった結果は勝点1を分け合うこととなった。やっと、2010Jリーグディビジョン2が始まった。今季も多くの好ゲームを期待したい。
試合は勝つために行い、プレーはシュート(得点)のために行う。
ボールを持った瞬間の第一選択肢はシュートであることは周知の事実。
そこに至るまでの戦術と選手の真剣勝負を私たちは堪能する。そして、それに一喜一憂する。
1個のボールから生まれるドラマの筋書きは、誰にも書くことも演出することもできない。
サッカーには、予測どおりにならない要素が多すぎる。ますますサッカーが好きになった。
以上
2010.03.08 Reported by サカクラゲン