クラブ史上初の天皇杯決勝に挑む神戸。「後半戦の出来を見たらふさわしい立場にいると思う」と自信を深めるのは酒井 高徳だ。明治安田J1を3連勝で締めくくり、アンドレス イニエスタの先制弾で突破口を開いた準決勝・清水戦の勝利と合わせ、公式戦4連勝中と勢いに乗る。
クラブとしては初の決勝だが、チーム内には経験者もいる。柏在籍時の2012年度、天皇杯決勝・G大阪戦で先発出場し、決勝ゴールを決めた渡部 博文もその1人。同年、前年の栃木への期限付き移籍から戻ったが、リーグ戦出場は限られていた渡部。「J1で挑戦したい気持ちの中で、もがいていた年だった」と苦闘を抱えたシーズンの最終盤、急きょ自身に決勝先発のチャンスが訪れた。「準備していたらああいう形でゴールっていうプレゼントが来るんだなって感じでしたね」と当時を振り返る。
渡部が強調したのは、綿密な“準備”の大切さだ。決勝へのトレーニング期間、誰もが「すごくチームの雰囲気が良い」と言葉をそろえ、練習からの激しい競争でチーム力を高めてきた。決勝戦で大切なことは何か、田中 順也はこう口にした。
「決勝に至るまでの自信の積み上げがある。最後のところで落ち着けるか。それが誰に来るのか分からない。そのシチュエーションで全員が準備すること、それに最後は“思い”が一歩の違いを生む。ブレることなく、チームがバラバラにならなかったほうが優勝する」 ダビド ビジャや那須 大亮の現役ラストマッチともなる一戦へ、神戸の野心は明確に研ぎ澄まされている。
その一方で、鹿島にも勝たなければならない理由がある。多くの主力選手がチームを離れた今季だったが、AFCチャンピオンズリーグ(ACL)でベスト8に進出し、JリーグYBCルヴァンカップは4強。J1リーグ戦は3位で終えるなど、クラブに根づいた勝利のメンタリティーを着実に発揮。Jリーグにおける“常勝軍団”の代名詞は、タイトル獲得でシーズンのフィニッシュを飾る準備を進める。
これまでに獲得したタイトルは、国内レースやACLを合わせて20個に及び、この天皇杯決勝は21冠への挑戦。さらに、リーグ3位ではACLのプレーオフから戦うことになるが、天皇杯を制覇すれば大会にストレートインできることも大きい。
そして、2017シーズン途中から指揮を執った大岩 剛監督の今季限りでの退任が発表されている。苦楽をともにした指揮官との最後の共闘に燃えない者はいないだろう。準決勝で長崎を激闘の末に破ったあと、大岩監督は決勝戦へ向けてこうコメントした。
「僕のサッカー、そういうことをやりたいという気持ちよりも、もう決勝戦ですので、どんな形でも勝利を目指す、と。鹿島アントラーズの哲学である、常に目の前のタイトル、目の前の試合に全力を尽くす、そういう気持ちで臨みたい、そういう気持ちで準備したい」 クリムゾンレッドとアントラーズレッド、どちらの“赤”が歓喜に揺れるか。舞台は、これから多くの感動と興奮を呼んでいくことになる新国立競技場。最高のお膳立てが整った1月1日、開かれる新たな歴史の扉に注目だ。
[ 文:小野 慶太 ]


