レギュレーションの関係から、昨季の浦和は二重の意味でアジアの舞台へのチャンスがなかった。明治安田J1では中位にとどまり続け、ならば天皇杯を勝ち上がって……と考えても、J1はリーグ戦上位2チームにしか出場権が与えられなかった。アジアの戦いへ返り咲くことを渇望する浦和にとってようやく、ひりつくトーナメントが戻ってきた。
それは同時に、ジャイアントキリングされる危険も伴う。一昨年の第99回大会ではラウンド16でJFL所属のHonda FCに不覚を取っており、過去にも何度か下位カテゴリーのチームに敗れて敗退を余儀なくされている。しかし今季の浦和はここ2~3年のモヤモヤを吹き飛ばしつつある。リーグ開幕当初こそ成熟に時間を要したものの、リーグ戦は上位を射程に捉えており、JリーグYBCルヴァンカップでも選手をローテーションしつつグループステージを突破。若手・中堅・ベテランと外国籍選手が融合し、確たるスタイルを築きつつある浦和は脆さと決別しようとしている。
ジャイアントキリングが起きる理由の1つとして、控えメンバーを中心としたチームが機能しないというのはよくある話。ただ、いまの浦和は誰が出てもサッカースタイルの浸透度は高い。なおかつ、6日のルヴァンカッププレーオフステージ第1戦・神戸戦ではキャスパー ユンカーと小泉 佳穂という主力中の主力を温存した。
「天皇杯はACLにもつながるチャンスなので大事にしていきたい大会。もちろん神戸に勝ってルヴァンカップで次に進みたいが、天皇杯の重要性もしっかり考えながら試合に臨みたい」とリカルド ロドリゲス監督は語っており、主力選手を集中投入する可能性も考えられる。
「分析スタッフからは富山はJ3で非常に良い戦いを見せている、良いチームだと聞いている」と警戒も怠りなく、普段のリーグ戦では使用していない浦和駒場スタジアムでの練習も実施して準備は万端だ。浦和が再びの盾獲りと、アジアの舞台進出へ挑む。
一方の富山だが、たとえ万全の浦和といえどどうなるか分からない、という勢いを持っている。2014年にJ2最下位となりJ3へと降格して以降、なかなか上位に肉薄できずにもがいてきたが、今季は一味違う印象だ。
まだシーズン序盤とはいえ、9試合を終えて6勝2分1敗。17得点8失点の好成績。J3第3節で敗れて以降はリーグ戦6戦無敗。天皇杯1回戦を盤石の内容で勝ち上がり、先日のJ3第9節も鳥取に3-0と完勝。そこから中9日と休養・準備期間も万全だ。
今季より指揮を執る石﨑 信弘監督のスタイルは攻撃的でそのぶん脆さもあり、どちらかというとジャイアントキリング向きではないかもしれない。ただ[3-1-4-2]システムを基本に、多くの選手がゴール前になだれ込んでくる攻撃は迫力満点。得点パターンも多彩で、前線からのプレスでショートカウンターを仕掛けたかと思えば、後方からスピーディーにパスをつなぎ、コンビネーションの崩しもある。
かつて浦和でも活躍した西部 洋平が今季から守護神を務めており、浦和ファンからすると懐かしさもある。ただそんなノスタルジーを感じている余裕はないかもしれない。ダイナミックでエネルギッシュな富山、要注意である。
[ 文:沖永 雄一郎 ]
