直近のリーグ戦を振り返っておくと、G大阪は鳥栖相手に1-0の僅差で勝利。チーム全員がハードワークを見せ、鳥栖に枠内シュート1本しか許さなかったばかりか、松波 正信監督が求める「どこでボールを奪って、どうやって出ていくかというところをしっかりと準備してきた中で、何度かチャンスを作れた」という縦への推進力を発揮した。また、今季なかなか見せ切れなかった狙いのあるカウンターを披露し、決勝点も自陣からのロングカウンターを宇佐美 貴史がゴラッソで完結させた格好だった。一方の浦和は、シュート20本を放ちながらPKの1点に終わったG大阪戦の鬱憤を晴らすかのようなゴールラッシュで柏を圧倒。戦線復帰したキャスパー ユンカーのゴールも含めて5得点を叩き出し、破壊力を見せつけた。
シーズン終盤を迎えて、遅まきながら堅守速攻という方向性を確立しようとしているG大阪と、リカルド ロドリゲス監督とともに積み上げてきたスタイルでブレない戦いを目指す浦和が、準決勝への切符を争うことになる。「割り切ってやっていくしかないという話はしている」と宇佐美が語るように、守備に軸足を置くことはいまのG大阪の総意である。ただ、浦和戦に向けての懸念材料は、鳥栖戦の途中でピッチをあとにしたキム ヨングォンの状態だ。昌子 源と三浦 弦太も別メニューが続いており、“野戦病院”状態なCB陣だけに、その組み合わせには注目だ。そして、前回対戦で神がかったスーパーセーブを見せた東口 順昭は、浦和戦でとりわけその輝きを放つ守護神である。鳥栖戦では出番の少なかった東口だが、今回は忙しい試合になるはずだ。
AFCチャンピオンズリーグ出場権獲得の可能性を残す浦和だが、今季唯一手にしうるタイトルはこの天皇杯のみ。かつて幾多の名勝負を繰り広げてきた宿敵を相手に、高いモチベーションで乗り込んでくるのは間違いない。「今回はたくさんゴールを決めることができましたが、試合ごとに相手も異なりますし、自分たちも人が変われば特徴が変わってくる」とリカルド ロドリゲス監督は柏戦後に語ったが、東口擁するG大阪のゴールをこじ開ける上で、シュート精度が不可欠だということは身をもって知っているはずだ。
埼玉スタジアム2002ではドローゲームを演じた両者だが、天皇杯では必ず勝者と敗者が決定する。東口を中心とした堅守から鋭いカウンターを狙うG大阪と、狙いのあるボール回しから相手ゴールに迫る浦和。戦い方こそ対照的だが、かつて“ナショナルダービー”とさえ称された顔合わせにふさわしい熱戦を期待したい。
[ 文:下薗 昌記 ]
